従業員の早期退職を募集する企業が増加傾向にあるなか、早期退職制度の利用を検討する人も増えてきています。早期退職制度を活用する大きなメリットとして、退職金の割増が挙げられます。

しかし、早期退職制度の活用にはいくつかリスクや注意点があります。早期退職後に後悔しないためには、早期退職制度のリスクや注意点を事前に理解することが重要です。

本記事では、早期退職制度や割増退職金について詳しく紹介していきます。早期退職制度のリスクや注意点についても紹介しているので、早期退職を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

早期退職制度とは

早期退職制度とは、定年を迎える前に従業員が会社を退職するための制度のことを指します。40代や50代で制度を利用する人が多く、主に「選択定年制度」と「希望退職制度」の2種類に分類されます。

ここでは、「選択定年制度」と「希望退職制度」それぞれの違いについて見ていきましょう。

1:選択定年制度

選択定年制とは、所定の定年年齢に達していない状態で自ら退職を申し出た場合に、会社から優遇される制度のことです。早期退職制度の利用者に対しては、退職金を割り増すといった優遇措置が取られることが多い傾向です。

・選択定年制度の事例

選択可能な定年の年齢55〜65歳までの年齢から好きな定年を選択可能
選択(説明)時期50歳:制度について説明
52歳:定年の年齢を選択
54歳:最終確認の実施
勤務形態、職務内容 フルタイム勤務が基本(従来通り)
*企業によって時短勤務や休日を増やす場合あり
給与水準など51〜54歳までの間給与の減額なし
55歳以降の給与水準は従前の60%レベル
参考:人事院「選択定年制実施事例」

選択定年制度は、セカンドキャリアを叶えるために以下の点で魅力的な制度と言えます。

  • 通常の定年時と比べ退職金が多く支給されることで、転職活動や独立起業の資金にあてられる。
  • 割増された退職金で生活に余裕が生まれるため、自分のセカンドキャリアとしっかり向き合えd

注意点として、企業によっては一定の年齢に達した段階から給与の水準が下がることもあるので、自分のセカンドキャリアと相談し定年時期を明確にしておくことも大切です。

2:希望退職制度

希望退職制度とは、会社が従業員の主体的な退職を募る仕組みのことを指します。人員整理を目的に行われることが多く、リストラの前段階とも言えます。

・希望退職制度の事例

対象者の条件勤続10年以上かつ59歳10ヶ月以下の社員
申請期間20××年7月1日〜20××年8月20日
退職予定日20××年9月30日
割増退職金上限4,000万円
その他キャリア開発休暇を含む「再就職支援」あり
参考:ダイヤモンドオンライン

会社が期間を限定して退職者を募集することが一般的で、早期退職希望者は退職金の割増など、通常の定年より優遇された条件で退職できることが多い傾向です。

企業によっては、再就職支援などを実施するケースもあり、さらなるキャリアアップを目指す人には魅力的な制度と言えます。

早期退職でもらえる退職金はいくら?

早期退職でもらえる退職金はいくら?

早期退職することで退職金はいくらもらえるのでしょうか。ここでは、通常の定年時の退職金とも比較しながら早期退職時の退職金について詳しく見ていきましょう。

退職金とは

退職金とは退職時に会社から支給される金銭のことを表し、退職金のほかに「退職手当」や「退職一時金」などとも呼ばれます。

退職金は定年退職時に支給されるイメージが強いですが、早期退職時や自己都合退職時、解雇時なども支給の対象となります。ただし、解雇の中でも懲戒解雇の場合、退職金の減額や不支給といった企業の就業規則に従う必要があるため注意が必要です。

早期退職でもらえる退職金の金額、相場は?

ここでは、早期退職でもらえる退職金の金額と相場について詳しく紹介していきます。

2018年に厚生労働省が発表した調査結果によれば、早期退職制度を活用した場合の退職金は2,000万円以上(1人平均)であることがわかっています。

※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者

大卒者で通常の定年を迎えた人の退職金が平均1983万円、早期退職制度を活用した人の退職金が平均2326万円と、約350万円もの開きがあります。

高卒者でも約400万円の差があることがわかっており、早期退職制度を活用することで退職金が優遇される結果となりました。

割増退職金とは

割増退職金とは、通常の定年を迎えた際に支給される退職金額に加えて支給される退職金のことを指します。早期退職制度などの適用により、定年を迎える前の退職者に対し優遇措置として支給されることが一般的です。

割増退職金の支給金額は、従業員の退職時の年齢や勤続年数、企業の業績などにより変動するため、正確な金額については事前に確認しておく必要があります。

増加する「割増退職金制度」導入企業

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、割増退職金制度を導入する企業や導入を検討している企業が増加傾向にあります。

2021年に株式会社東京商工リサーチが発表した調査結果によれば、600社以上の企業が「コロナ後に早期退職制度を導入した」もしくは「導入を検討している」と、回答しています。

また、調査結果を大企業(※)と中小企業に分類したところ、大企業で「導入している」もしくは「導入を検討している」と回答した企業は全体の2割を越える結果となっています。

※資本金1億円以上

大企業に比べて中小企業の導入割合は低い傾向となっていますが、「導入を検討している」企業数は約500社となっており今後増加していく可能性も読み取れます。

割増退職金の導入が増える背景

2013年に「高年齢者雇用安定法」が制定され、定年が60歳から65歳に引き上げられました。さらに、2021年に「高年齢者雇用安定法」が改正され、「70歳までの定年引き上げ」「70歳までの継続雇用制度」などの措置を講じる企業の努力義務が盛り込まれています。

しかし、企業の業績不振や事業規模の縮小などの際には、人員整理を余儀なくされる企業も少なくありません。法改正により高年齢者の労働環境の確保が義務付けられていますが、企業によってはそこまでの余裕が生まれないのが現実です。

こうした背景から、高年齢労働者に早期退職を促すことで人員整理が可能になり、組織にとってプラスになると判断する企業が増えてきています。

割増退職金制度は企業が高年齢労働者に早期退職を促す目的で導入されるケースが多く、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、導入する企業が増えています。

希望早期退職・退職金に潜む5つのリスク

割増退職金の優遇措置が受けられる可能性が高い希望早期退職ですが、退職金が割増されるという理由だけで早期退職を決断すると、退職後に後悔するケースも少なくありません。

ここでは、希望早期退職に潜む5つのリスクについて詳しく紹介していきます。

その後の「収入」が減ってしまうリスクがある

早期退職後に転職した場合、収入が減少する可能性を想定しておかなければいけません。

2021年に厚生労働省が発表した調査結果によれば、40代〜50代の転職で約30%の人が「収入が減った」と回答しています。

増えた減った変わらない
40〜44歳39.9%22.6%36.4%
45〜49歳34.1%30.4%34.4%
50〜54歳32.2%31.3%35.4%
55〜59歳22.6%51.1%25.8%
出典:令和3年上半期雇用動向調査結果|厚生労働省

希望早期退職制度の活用は割増退職金などのメリットがある反面、退職後の収入減少というデメリットも理解したうえで検討するようにしましょう。

年金の支給額が下がるリスクがある

早期退職によって年金の支給額が下がるリスクも頭に入れておく必要があります。

老後の年金には「老齢厚生年金」と「老齢基礎年金」の2種類があります。それぞれの年金の特徴と支給額が下がるパターンについて見ていきましょう。

・老齢厚生年金

老齢厚生年金の支給額は、受給を開始するまでの平均給与と加入月数によって決まります。仮に55歳で早期退職し転職しなかった場合、10年分の加入月数が減ることになり年金支給額が下がります。

・老齢基礎年金

老齢基礎年金の支給額は、20歳から60歳までの保険料納付月数によって決まります。仮に55歳で早期退職し国民健康保険料を支払わなかった場合、5年間の未納が発生し年金支給額が下がります。

早期退職することで年金支給額が下がる可能性があることを事前に理解し、早期退職後の人生設計についてしっかりと考えておきましょう。

退職金があるから「転職しない」ことはリスク

「退職金があるから」という理由で転職しないことにはリスクがあることを理解しておく必要があります。

人生100年時代と呼ばれる現代において、老後に必要な資金は2000万円〜3000万円とも言われています。早期退職は通常の定年よりも早い段階で退職するため、さらに資金が必要です。

2021年に公益財団法人生命保険文化センターが発表した調査結果によれば、世帯主が60歳から64歳の夫婦の老後生活資金には月に平均約20万円が必要とされています。

早期退職で退職金が支給されるからといって転職しなければ、将来的な資金にゆとりがなくなり後悔するケースも少なくないのです。

早期退職後に、「独立や起業をする」「やりたいことに挑戦する」など明確なセカンドキャリアが決まっていないのであれば、転職という選択肢は常に頭に入れておきましょう。

「再就職先」が見つからないリスクがある

40代、50代で早期退職した場合、再就職先がなかなか見つからないこともリスクのひとつです。

2020年に厚生労働省が発表した「年代性別の転職入職率」の推移を見ていきましょう。

転職入職率とは、過去1年以内に他の会社で勤めていた人が入職した割合を示したものです。調査結果によれば、40代50代の転職入職率は他の年代と比べて低い傾向であることがわかっています。

特に男性の転職入職率は、40代から50代にかけて右肩下がりに推移しており、「50〜54歳」の転職入職率は各年代で最も低く4.2%です。

このことからも、40代〜50代で早期退職後に再就職先を見つけるのは大変なことだと理解できます。

早期退職後に転職を考えている人は、転職活動が長引く可能性があることをあらかじめ想定しておく必要があります。

「副業(複業)」を始めず早期退職を決断するのはリスクである

早期退職の事前準備として「副業(複業)」を始めてみることがおすすめです。

早期退職後に「再就職先が決まらない」「収入が減った」などの不安を抱き、早期退職したことを後悔するケースも少なくありません。

事前に副業を始めておくことで、こうした不安やリスクの抑制につながります。早期退職前に副業を始めておくメリットは次の通りです。

  • 収入増加につながる
  • 人脈を広げられる
  • スキルアップにつながりセカンドキャリアの選択肢が広がる

早期退職後の生活を有意義に過ごすためにも、副業を始めてみることもぜひ検討してみてください。

退職金だけで満足できない?早期退職後のキャリアプラン

退職金だけで満足できない?早期退職後のキャリアプラン

ここまで早期退職制度における退職金の支給額や、希望早期退職のリスクについて紹介してきました。

早期退職をうまく活用し今後の人生を理想的なものにしていくためには、退職金だけで満足すべきではありません。早期退職後の人生についてよく考え、キャリアプランを明確にすることが大切です。

ここでは、早期退職後のキャリアプランについて詳しく紹介していきます。

キャリアアップのために転職する

早期退職後にさらなるキャリアアップを目指し転職することも選択肢のひとつです。具体例を挙げて見ていきましょう。

  • 大手メーカーで海外営業マネージャーとして活躍していたが、コロナの影響による業績悪化やリモートワークの増加から今後のキャリアを考え早期退職を決意。大手エージェント「ビズリーチ」を活用し、中小メーカーの海外営業部長として転職に成功。
  • 大手消費財メーカーの新規事業マーケティングマネージャーとして活躍していたが、事業縮小の影響から新規事業への投資が凍結。仕事のやりがいを求め早期退職を決断。大手エージェント「リクルートダイレクトスカウト」を活用し、大手メーカーの新規事業開発責任者として転職に成功。

早期退職後に転職する場合の注意点として、事前にキャリアの棚卸しや今後のキャリアプランを明確にしておきましょう。そのうえで、転職サイトやエージェントに登録し、早期退職する前に転職の準備を進めておくことが重要です。

前章でも紹介した通り、40代〜50代での転職は簡単なことではありません。転職活動が長期戦になることも視野に入れ早めの準備を心掛けましょう。

業務委託で副業(複業)をはじめる

業務委託で副業(複業)を始めるのもおすすめです。副業を始めるメリットは前章で紹介しているのでここでは割愛しますが、これまで培ったスキルや経験を生かして副業を始めてみましょう。

副業の種類には、下記のようなものが例として挙げられます。

  • ライティングスキルや専門知識を生かしWebライターとして活動する
  • 外国語のスキルを利用して翻訳業務をする
  • プログラミングスキルを使ってWebサイトやアプリ制作をおこなう
  • Webデザインのスキルを生かしロゴやWebサイトのデザイン業務をする
  • キャリアコンサルタントとして就職支援セミナーなどの講師をおこなう

40代50代での転職は年収が下がる可能性もあるため、副業をおこなうことで収入面での負担も軽減されます。

副業を始めることでさらなるスキルアップにもつながりますので、ぜひ検討してみてください。

強みを生かして独立起業する

早期退職後のキャリアプランで、強みを生かして独立起業することも選択肢に入れてみてください。

これまでのキャリアで培った強みとなる経験やスキルに加え、資格を有しているとより独立起業がスムーズに行えます。

  • 長年にわたり企業の経営全般に携わり、中小企業診断士の資格も取得。早期退職をきっかけに独立起業を決意し、コンサルティング関係の会社を立ち上げた。
  • 企業に入社後、主に人事や総務関係の仕事に従事し5年前から総務部長として活躍。社会保険労務士の資格を取得し、早期退職をきっかけに独立起業。

独立起業となると、転職に比べハードルは高くなりますが、自分が目指すセカンドキャリアが明確に決まっている人はやりがいをもってチャレンジできます。

早期退職制度を活用し、割増退職金を起業の資金に充てることも選択肢のひとつです。

早期退職後に独立起業を目指す人は、退職前から必要な資格を取得するなど、しっかりと準備をおこなっていきましょう。

まとめ

早期退職制度を活用することで退職金が割り増しされる可能性があります。厚生労働省の発表では、割増退職金の支給額は1人平均2000万円以上とも言われています。

こうした割増退職金の魅力に惹かれて、早期退職を視野に入れる人も少なくありません。

しかし、早期退職には下記のようなリスクがあることも事前に把握しておく必要があります。

  • その後の「収入」が減ってしまうリスク
  • 年金の支給額が下がるリスク
  • 退職金をあてにして「転職」しないリスク
  • 「再就職先」が見つからないリスク
  • 「副業(複業)」を始めず早期退職を決断するリスク

早期退職のリスクを回避するためには、退職後のセカンドキャリアを明確にしておくことが大切です。自分のこれまでの人生やキャリアを振り返り、転職や独立起業など今後の進むべき進路を決めておきましょう。

また、早期退職をきっかけに副業を始めることで、金銭面や精神面での不安を緩和できるのでおすすめです。

早期退職制度をうまく活用し、理想のセカンドキャリアを手に入れてください。

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