複業(副業)の広まりやコロナによる影響の拡大で「早期退職制度」という言葉を耳にする機会が増えました。50代に差し掛かり本格的にセカンドキャリアと向き合い、49歳で早期退職制度を利用したいと考える人も少なくありません。

早期退職制度には多くのメリットがあり、うまく活用することで自分が思い描いたセカンドキャリアを実現することが可能です。

一方で、早期退職制度にはいくつかの注意点があり、事前に理解しておかなければ後悔するケースもあります。

この記事では、49歳で早期退職制度を利用したい人に向けて、早期退職制度の現状と注意点について詳しく紹介していきます。

自分が思い描くキャリアプランを実現するために、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修:勝田健氏
スタートアップ企業に特化した転職エージェントに従事。大手VCと連携し、累計約100名のCxOポジションに紹介実績あり。転職エージェント歴22年。スタートアップ業界の豊富な人脈(VC・起業家・CxO)と知見が強み。個人の「WILL」をベースとしたキャリア支援実績は累計2000名以上。スタートアップ企業の採用支援経験を活かし、自らも複業(結婚相談所・採用コンサルティング・新規事業起ち上げ支援)を実践。幅広い業界・サービスのビジネスモデルを熟知。

早期退職とは|2種類に分かれる早期退職制度

早期退職とは|2種類に分かれる早期退職制度

早期退職は大きく下記の2種類に分類されます。ここでは、早期退職の種類や制度の違いについて紹介していきます。

  1. 入社後の早期退職(早期離職)
  2. 定年前の早期退職

>>関連記事早期退職制度のメリットとデメリットを徹底解説 | 社員・会社の両方の視点で紹介

入社後の早期退職(早期離職)

入社後の早期退職(早期離職)は、会社に入社して短期間で退職するパターンです。例えば、20歳で入社して数カ月から数年で退職するといったものも早期退職(早期離職)に該当します。

定年前の早期離職

定年前の早期退職は、定年を迎える直前で退職することを表します。主に、40代や50代の退職で、「選択定年制度」や「早期希望退職制度」などを利用する人が多い傾向です。

同じ早期退職でも、退職するタイミングで意味合いが大きく変わってきます。本記事では、後者の「定年前の早期退職」について詳しく紹介していきます。

定年前の早期退職で利用することの多い「選択定年制度」と「早期希望退職制度」の内容と違いについて確認していきましょう。

1:選択定年制度

選択定年制度とは、企業が定年のタイミングを何歳にするのか設定し、従業員の意志で選択できる制度です。

現在は、高年齢者雇用安定法により定年退職は65歳と義務づけられています。しかし、企業が選択定年制度を導入することにより、従業員の就労意志に応じて定年のタイミングを選択できます。

・選択定年制度の事例

選択可能な定年の年齢55〜65歳までの年齢から好きな定年を選択可能
選択(説明)時期50歳:制度について説明
52歳:定年の年齢を選択
54歳:最終確認の実施
勤務形態、職務内容フルタイム勤務が基本(従来通り)
*企業によって時短勤務や休日を増やす場合あり
給与水準など51〜54歳までの間給与の減額なし
55歳以降の給与水準は従前の60%レベル
引用:人事院「選択定年制実施事例」

選択定年制度は自身のセカンドキャリアを実現するために魅力的な制度です。企業によっては一定の年齢から給与水準が下がるケースもあるので、事前に自身のセカンドキャリアのプランと照らし合わせ、定年時期を明確にしておく必要があります。

2:早期希望退職制度

早期希望退職制度とは、企業が定年前の従業員に対し早期退職を募る制度です。企業の業績不振などを理由に、人員整理の目的で導入されるケースが多い傾向です。

早期希望退職制度には法的な強制力はないため、あくまで企業と従業員の双方が合意したうえで成立します。

・早期希望退職制度の事例

対象者の条件勤続10年以上かつ59歳10ヶ月以下の社員
申請期間20XX年7月1日〜20XX年8月20日
退職予定日20XX年9月30日
割増退職金上限4,000万円
その他キャリア開発休暇含む「再就職支援」あり
引用:ダイヤモンドオンライン

一般的には、期間を限定して希望者を募ることが多く、退職金の割増など通常の退職と比べ優遇された条件で退職可能です。多いところでは、上限4000万円もの退職金を支払う企業もあります。

49歳の早期退職の現状

ここまで2種類の早期退職制度を紹介してきましたが、49歳で早期退職制度を利用したい場合、どのような弊害があるのでしょうか。

ここでは、49歳の早期退職の現状について詳しく紹介していきます。

1:早期退職制度が整っている会社が少ない

現状では、早期退職制度が整っている会社は少数です。

下の表は、2021年に株式会社東京商工リサーチが9,039社を対象に行った調査結果です。

【早期退職やセカンドキャリアに関連する制度を導入していますか?】

調査結果から、全体の約90%におよぶ8,099社の企業が「早期退職制度を導入しておらず、今後も予定はない」と回答しています。

一方で、「導入を検討している」と回答した企業も2番目に多い591社となっており、早期退職制度が今後普及していく可能性も読み取れます。

2:50歳からが対象の早期退職制度が多い

続いて早期退職制度を導入している企業の、制度を利用できる対象年齢についても見ていきましょう。

2021年に株式会社LENDEXが発表した「早期退職制度」に関するアンケート結果によれば、早期退職制度の対象年齢は「50歳以上60歳未満」が最も多く7割以上を占めています。

多くの企業が早期退職制度の対象年齢を50歳以上に設定しており、49歳から早期退職制度を利用できる企業は少ないことがわかります。

早期退職制度の対象年齢の傾向を踏まえると、49歳の時点では早期退職に向けた準備期間として捉え、今後のセカンドキャリアを考えておくことも大切です。

なぜ企業は早期退職制度を取り入れるのか

企業はなぜ早期退職制度を取り入れるのでしょうか。ここでは、企業が早期退職制度を導入する理由について紹介していきます。

早期に会社を退職したい従業員に対する支援

1つ目の理由が、早期に会社を退職したい従業員に対する支援です。早期に会社を退職したい理由はさまざまですが、例えば以下のような点で役立ちます。

  • セカンドキャリアで独立や起業を検討しており、早期退職して退職金を独立や開業の資金に充当できる
  • 金銭面と時間に余裕ができるため、焦らず計画的な転職活動を行える

企業によっては、早期退職制度を利用した従業員への転職サポートを行ってくれる場合もあります。

早期退職制度を有意義に利用するためにも、自身のセカンドキャリアは事前にしっかりと決めておく必要があると言えます。

業績悪化に伴う人員整理

2つ目の理由が、企業の業績悪化に伴う人員整理です。企業の業績が悪化すれば、大きな支出項目である人件費の削減に乗り出す企業が多くなります。

早期退職を希望する従業員を募ることにより、トラブルなく人員整理をおこなえます。

しかし、企業としても、若手社員の退職や想定以上の人数の退職者を出さないように、制度を利用できる対象年齢の設定や期間を限定して募集をかけることが一般的です。

49歳の早期退職における注意点

49歳の早期退職における注意点

早期退職にはいくつか注意点があります。ここでは、49歳の早期退職における注意点について詳しく紹介していきます。

早期退職制度の正しい知識を身につけ、制度をうまく活用していきましょう。

1:選択定年制度を選ぶと「自己都合退職」になる

選択定年制度は、「恒常的に社内に設けられた制度を従業員の意志で利用する」という概念であることから「自己都合退職」として扱われます。

自己都合退職は、失業手当(失業給付金)の受給に下記の点で影響します。

  • 離職日の翌日から7日間の待期期間がある
  • 最長で2カ月間(※)の給付制限期間がある
  • 会社都合退職と比べて給付期間が短くなる可能性あり

選択定年制度を選ぶと、失業手当の給付に大きく影響することを覚えておきましょう。

(※)2020年10月の失業等給付の制度改正により、5年間のうち2回までは給付制限期間が2カ月に短縮(離職回数3回目以降は3カ月)

2:早期希望退職制度を利用すると「会社都合退職」になる

早期希望退職制度は、「臨時で募集される会社都合の制度」という概念であることから「会社都合退職」として扱われます。

会社都合退職は、失業手当(失業給付金)の受給に下記の点で影響します。

  • 7日間の待期期間終了後に受給手続きが可能(※)
  • 特定受給資格者として給付期間が多くなる可能性あり

早期希望退職制度を利用することで、選択定年制度と比べ失業手当で優遇されます。

(※)説明や手続きの関係上、実際に口座へ入金されるのは約1カ月

3:普段から「退職後のセカンドキャリア」について考えておく

いずれの制度を利用するにしても、49歳で早期退職する場合に考えておきたいことは、退職後のセカンドキャリアです。また、上述の通り、多くの企業が早期退職制度の対象年齢を50歳以上に設定しているため、49歳の時点から退職後のセカンドキャリアについて考えておくことで、スムーズに早期退職制度を活用できるでしょう。

どれだけ魅力的な退職制度があったとしても、現在の会社を退職することには変わりありません。セカンドキャリアを考えず一時的な感情で早期退職すると、以下のように退職後に後悔することもあります。

  • 転職先が見つからない可能性がある
  • 収入が減ってしまう恐れがある
  • 年金支給額が減る可能性がある

早期退職を検討する際は、こうしたデメリットを頭に入れておきましょう。

また、セカンドキャリアは早期退職の直前や退職してから考えるのではなく、普段から自分の人生と向き合い、考えておくことが大切です。

>>関連記事セカンドキャリア支援を受ける方法 | 支援企業の事例からおすすめサービスまで網羅

49歳で早期退職制度を活用するメリット 

ここまで、早期退職の現状や早期退職制度の内容について詳しく紹介してきました。早期退職制度を利用する際は、メリットについても理解しておく必要があります。

ここでは、49歳で早期退職制度を活用するメリットについて紹介していきます。

退職金が割増される場合がある

企業によって異なる部分もありますが、早期退職制度を活用することにより退職金が割増される傾向が強いです。

2018年に厚生労働省が発表した「就労条件総合調査」によれば、通常の定年退職時と比べ早期退職制度を活用した場合の退職金は、約400万円高いことがわかります。

退職給付額(1人平均)退職給付額(1人平均)
退職事由大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
定年1,983万円1,618万円
会社都合2,156万円1,969万円
自己都合1,519万円1,079万円
早期優遇2,326万円2,094万円
出典:厚生労働省「退職給付の支給実態」

(※)勤続20年以上かつ45歳以上の退職者

早期退職制度は、うまく活用することで退職金を退職後の生活に充当できるため、非常に魅力的な制度と言えます。しかし、前述した通り会社を退職するというリスクがあるため、事前にセカンドキャリアをしっかりと考えておくことが大切です。

会社都合の退職扱いになる

「早期希望退職制度」を利用すれば、会社都合の退職扱いになる点も大きなメリットです。退職事由が「会社都合」もしくは「自己都合」なのかで、失業手当(失業給付金)の給付条件に大きく影響します。

会社都合で扱われる早期希望退職制度では、離職日の翌日から7日間の待期期間を経てすぐに失業手当の手続きに移行できます。また、特定受給資格者に認定されると、自己都合退職時と比べ、給付期間が長くなる可能性が高いです。

一方「選択定年制度」の場合、退職事由が自己都合扱いとなるため7日間の待期期間後に2カ月間の給付制限期間が発生します。どの制度を活用するかで退職事由が変わるため注意が必要です。

セカンドキャリアを始めるきっかけになる

49歳での早期退職は、セカンドキャリアを始めるきっかけにもなります。企業が早期退職制度を導入する理由は、大きく分けて下記の2点です。

  1. 早期に会社を退職したい従業員に対する支援
  2. 業績悪化に伴う人員整理

後者の理由だけを捉えてしまうとネガティブな印象を受けますが、ここで大切なことは前者の理由です。

早期退職制度を導入している企業のなかには、退職金の割増のほかに「キャリア開発休暇」や「転職サポート」をおこなっている企業もあります。「セカンドキャリアを歩むのであれば、退職金を割増して早い段階で送り出した方が可能性が広がる」という、企業の親心と捉えることもできます。

下記は、早期退職制度を活用した40代のセカンドキャリアの具体例です。

  • 小売業界でバイヤーとして活躍した知識と経験を活かし、早期退職後に飲食店を開業。早期退職制度で割増された退職金を開業資金に充当。
  • 40歳を過ぎてから早期退職制度の活用を決め、自身のセカンドキャリアを強く意識。これまで培ったプログラミングの経験とスキルに加え、キャリア開発休暇を活用し新たなプログラミング言語を習得。早期退職後に転職を果たす。

早期退職制度をより有意義に活用するために、事前に自身のセカンドキャリアをしっかり考えておきましょう。

会社や組織に縛られない自由な人生を歩める

早期退職制度を活用することで、会社や組織に縛られない自由な人生を歩める点もメリットと言えます。

「趣味の時間に使う」「心身のリフレッシュの時間に使う」など、自分のライフプランに合わせた人生を送るのも選択肢の1つです。早期退職して、独立や起業などに挑戦する人も少なくありません。

49歳で早期退職、退職後の3つのキャリアプラン

49歳で早期退職、退職後の3つのキャリアプラン

49歳で早期退職後、どのようなキャリアプランがあるのでしょう。ここでは、早期退職後の3つのキャリアプランについて紹介していきます。

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資格を取得してスキルアップする

1つ目が、資格を取得してスキルアップを目指すキャリアプランです。資格を取得することで、早期退職後の選択肢の幅が広がります。

特に、クラウドソーシングなどを活用し自分でも収入を得られ、転職にも生かせる下記のような資格がおすすめです。

資格副業の選択肢早期退職後の選択肢
中小企業診断士・経営コンサルティング
・記事の執筆(専門分野のライティング)
・資格講座の講師や添削指導など
・コンサルティング業界への転職
・独立や起業
行政書士・行政書士資格の独占業務(官公庁に提出する書類作成など)
・各種補助金申請のサポート業務
・記事の執筆(専門分野のライティング)
・法律事務所や弁護士事務所への転職
・企業の法務部への転職
・独立や起業
社会保険労務士・社会保険労務士の独占業務(健康保険や雇用保険などの加入手続きなど)
・各種補助金申請のサポート業務
・記事の執筆(専門分野のライティング)
・社会保険労務士事務所への転職
・企業の人事部や総務部への転職
・独立や起業

もちろん取得に向けた学習は必要ですが、早期退職後の人生を有意義に送るために資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

転職する

早期退職後に、さらなるキャリアアップややりがいを求めて転職する人も多い傾向です。

自分のやりたい仕事やこれまでのキャリアを生かせる仕事など、あらかじめ退職後の仕事を絞り込んでおくことが大切です。

また、40代での転職は決して簡単なことではなく、想像以上に転職活動に時間を費やすことや労力がかかることも想定しておきましょう。

早期退職する前に、自分のキャリアの棚卸しやスキルアップなどの事前準備をしておくことで、スムーズに転職活動に進めます。

スキルを生かし複業(副業)に挑戦

これまでのスキルを生かし複業(副業)に挑戦することも選択肢の1つです。

例えば、下記のようなパターンです。

  • IT系企業のソフトウェア開発に携わり、培ったプログラミングスキルを生かし副業に挑戦
  • 中小企業診断士の資格を生かして、経営コンサルタントの副業に挑戦
  • 外資系企業で培った英語スキルを生かして、翻訳の副業に挑戦

「これまでに培ったスキルをムダにしたくない」そう感じる人は、ぜひ副業に挑戦してみてください。

まとめ

早期退職制度は、自身のイメージするセカンドキャリアの実現にとても有効な制度と言えます。しかし、退職金目当てや目的もなく早期退職がしたいという場合は、退職後に後悔するケースも少なくありません。

早期退職で後悔しないためには、下記の2点を特に意識する必要があります。

  • 早期退職制度の内容と注意点を押さえる
  • 事前に自身のセカンドキャリアを明確にしておく

退職後に必要なスキルや資格がある場合は、早期退職する前に学習や資格取得を目指しておくことで、自身の理想のセカンドキャリアの実現に大きく近づきます。

49歳で早期退職を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。