これまでのキャリア・経験を活かして資格を取得したい……そう考えている方も多いはず。また、他業界・異業種へ転職し、新たなキャリアを築く40代も少なくはありません。

20年以上がむしゃらに働き続けこれまでのキャリアを振り返り、定年後の働き方について考えてしまう時期ではないでしょうか?

40代からのチャレンジを後押ししてくれるもののひとつに「資格」があります。

今回は、転職において資格を取得するメリットとそれらを選ぶ基準、さらにキャリアコーチの方々に、「40代からの転職に資格が必要か?」をお伺いします。

これから転職を考えている方、資格取得でキャリアアップしたいと考えている方に役立つ情報をまとめました。

この記事の監修:勝田健氏
スタートアップ企業に特化した転職エージェントに従事。大手VCと連携し、累計約100名のCxOポジションに紹介実績あり。転職エージェント歴22年。スタートアップ業界の豊富な人脈(VC・起業家・CxO)と知見が強み。個人の「WILL」をベースとしたキャリア支援実績は累計2000名以上。スタートアップ企業の採用支援経験を活かし、自らも複業(結婚相談所・採用コンサルティング・新規事業起ち上げ支援)を実践。幅広い業界・サービスのビジネスモデルを熟知。

40代からの転職で資格を取得する3つのメリット

資格といっても1日で簡単に取得できるものから、国家資格や公的資格など難易度の高いものまで、国内で受験できる資格は3,000以上あると言われています。

転職までに資格を取得しておくことでどんなメリットがあるのでしょうか?

自分のスキルを資格で証明できる

ひとつめのメリットは、資格を持っていると転職活動を有利に進められることです。

海外勤務の経験やグローバル事業に携わった素晴らしい実績があっても、どれだけ英語能力があるのかは、その実績だけでは判断しきれません。TOEICや英語検定などで、自身のスキルを証明することで、実績と共にアピールできます。

また、人事やエンジニアなど専門職で活用できる資格を取得しておくことで、給与アップなど待遇面の優遇が期待できます。自分のスキルを資格で証明できれば、転職時に有利に進められるでしょう。

未経験の分野への転職でも有利になる

資格の中には、実務経験がなくても取得できるものもあります。そのため、他業種の資格を取得しておくことで、転職先の候補を広げられるメリットもあります。

例えば、簿記。一般的には経理に関わる人が受験するものと考えられていますが、年齢や経験の制限はなく、どの級からでも受験可能です。

「実務経験がないので転職できない」と諦めてしまう職種でも、資格があることで40代からでも採用に至るケースがあります。新しい分野へチャレンジしたいと考えている人は、資格を武器にできれば、未経験分野への転職も現実味を帯びてくるでしょう。

資格手当をもらえる場合がある

3つ目のメリットは、資格手当をもらえる場合があるということ。

例えば、不動産業界・金融業界であれば、宅地建物取引士(宅建)の資格を所持しているだけで、月2〜3万円程度の資格手当が支給されます。手当の金額は企業ごとに異なりますが、一度取得すれば更新試験はなく、講習を受けるだけで一生使える資格です。

他にもITエンジニアや事務職など、資格を取得しておくことで昇給しやすくなる場合もあります。資格手当をもらえる条件を公表している企業も多いため、目指している業種や企業の採用条件と合わせて確認しておくのがおすすめです。

40代で取得する資格を選ぶ基準

40代で取得する資格を選ぶ基準

「転職のために資格を取得しよう!」と、手当たり次第受験すればいいわけではありません。40代から転職に役立つ資格とはどんなものなのか? 数ある資格の中から、今の自分にあった資格の選び方をご紹介します。

学習期間がどれくらいかかるか

国家資格であれば、受験できるのは年に数回。一発合格を目指すなら、試験対策の学習は欠かせません。

例えば、ファイナンシャルプランナー3級の資格を取得するために必要な平均学習時間は、100時間前後と言われています。毎日2時間学習したとして50日。仕事終わりや休日にどれだけの学習時間を作り出せるのか、スケジュール管理も大切です。自主学習だけでなく、専門スクールや通信教育で、効率的に資格取得を目指すのも良いでしょう。

しかし「1年以内に資格を取得し、転職もしたい」と「3年以内に資格を取得し、転職をしたい」とでは、学習期間は大きく変わります。どこにゴールを設定するのか、そのゴールで欲しい資格は取得できるのか、取得前に把握しておきましょう。

受験までにどのくらいコストがかかるか

5,000円前後で受験できるものから1万円以上かかるものまで、資格ごとに受験料は異なります。

受験料のみでは大きな負担になりません。しかし、学習に必要な参考書、スクールに支払う授業料といったコストは、資格ごとに異なるので注意しましょう。

仕事をしながら、家事をしながら、限られた時間の中で効率よく学習するために、どこまで時間とお金をかけることができるのか? 受験料の把握はもちろんのこと、受験までに必要なコストを算出しておくことが大切です。

転職先の企業で役立つ資格なのか

せっかく時間と労力をかけて取得した資格も、希望する転職先で活かせなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。

まず転職先の業種や目指している企業で必要とされている資格は何なのか、また資格取得に前向きな企業なのかなど、あらかじめ確認しておきましょう。

企業ごとで、採用時に重要視している資格も変わってきます。

例えば、入社条件としてTOEIC平均点以上が必須なのか、リーダーや専門職の採用条件として平均点以上を必須としているのか、企業が求める英語力も異なります。自分が目指す業種・企業で求める人材を理解した上で、必要な資格を選ぶようにしましょう。

自分が興味を持てる内容なのか

40代の転職に役立つ資格は、量よりも質を重視したいところ。

数ある資格の中から、転職活動の中で武器になる資格を選べるかがポイントです。また無事に転職したとしても、この資格内容に関わる部分は必須スキルとして求められます。自分が興味のない分野の資格を無理に取得し、自分の本領を発揮することなく再び転職……なんてことになりかねません。

そもそも自分が興味を持てる内容なのか、そしてその資格を武器に働き続けられるのか、少し先の将来を見据えながら検討するようにしましょう。

40代の転職に役立つ資格5選

40代の転職に役立つ資格5選

ここからは40代の転職に役立つ5つの資格をご紹介します。

  • TOEIC
  • 簿記
  • ファイナンシャルプランナー
  • 宅地建物取引士
  • キャリアコンサルタント

TOEIC

試験名TOEIC® Listening & Reading Test
受験資格年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験可能
試験日程毎月2回(同日の午前・午後)/日程は公式HPを確認
試験形式マークシート方式(リスニング&リーディング)
合格率【第287回 2022年1月実施分】600.4点
受験料7,810円(税込)

TOIECは国内では約2,900の団体・企業で活用されている資格です。

リスニング(約45分間・100問)・リーディング(75分間・100問)の合計約2時間、全200問のマークシート方式で実施。開催日程も多く、何度も受験できるため、比較的チャレンジしやすい資格でしょう。合格・不合格で判断されるものではなく、10~990点の「スコア」で通知されるのも特徴です。

簿記

試験名日商簿記検定試験
受験資格年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験可能
試験日程年3回(例年2月・6月・11月)
試験形式記述式(級ごとに試験時間・内容は異なります)
合格率【第159回、2022年実施分】1級 10.2%/2級 30.6%/3級 27.1% 
受験料1級 7,850円/2級 4,720円/3級 2,850円(すべて税込)

日本商工会議所が実施する簿記は、年間60万人近くが受験している資格です。

高校卒業レベルの3級、就職に有利とされる2級、合格すると税理士試験の受験資格にもなる1級と、レベルに合わせた級を年齢・学歴等に関係なく受験できます。3・2級についてはネット試験にも対応しているので、便利です。

経理や会計に関わることだけでなく、財務諸表の読み取りや経営に関わる基礎知識を身につけられるため、資格取得を推奨する企業も増えています。

ファイナンシャルプランナー

引用元:https://www.jafp.or.jp/aim/fpshikaku/kind/
試験名2級ファイナンシャル・プランニング技能検定
受験資格①日本FP協会認定のAFP認定研修を修了した者
②3級FP技能検定合格者
③FP業務に関し2年以上の実務経験を要する者
試験日程年3回(例年1月・5月・9月)
試験形式学科・実技試験
合格率【2022年1月実施分】学科試験 41.51%/実技試験 56.33%
受験料学科試験 4,200円、実技試験4,500円(いずれも非課税)

ファイナンシャル・プランナー(FP)資格には、国家資格である1〜3級のFP技能検定と、民間資格である日本FP協会認定資格であるAFPとCFPがあります。

40代の転職に求められるのは、FP技能検定2級以上。合格率も比較的高めなので、未経験から独学での合格を目指す方も多い資格です。試験には、学科・実技の2種類がありますが、どちらも合格する必要があります。一度受験して、片方を落としてしまっても再試験可能なので、再チャレンジしやすい資格でもあります。

宅地建物取引士

試験名宅地建物取引士資格試験
受験資格年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験できます
試験日程年1回(例年10月)
試験形式四肢択一式による筆記試験
合格率【2021年10月実施分】17.9%
受験料7,000円(非課税)

毎年20万人ほどが受験している「宅建」。年に一度しか受験できないため、勉強時間もたっぷり使える資格です。

不動産の売買や仲介をする場合、各事務所に宅地建物取引士(5人に1人)を従事させることが義務付けられています。また金融業界でも住宅ローンに関わる部分で必要です。宅建を持っていると、不動産業界以外でも活躍できる場面が期待できます。

キャリアコンサルタント

試験名キャリアコンサルタント試験
受験資格​​①厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した方
②労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発および向上
のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する方
③技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験
又は実技試験に合格した方
試験日程年3回(2022年は、3・7・11月開催)
試験形式学科(筆記)・実技(論述、面接)試験
合格率【第18回 2021年度】学科試験 79.0%/実技試験 57.0%
受験料学科試験8,900円、実技試験29,900円(いずれも税込)

2016年より新たに創設された国家資格の「キャリアコンサルタント」。ハローワークや大学の就職課での勤務や採用に関連する職種だけでなく、従業員のキャリアを支えるポジションとして近年人気の資格です。

学科と実技の両方に合格した人だけが、キャリアコンサルタント名簿に登録し名乗ることができます。人事や採用部門への転職や、この資格を復業や独立といったキャリアアップの足がかりとして資格取得をする人も多い資格でしょう。

40代からの転職に資格は必要なの? | キャリアコーチに聞いてみた

実際のところ40代の転職活動において、資格は有利に働くのでしょうか?

シニア層の転職活動をサポートしているキャリアコーチの意見を聞いてみました。

40代からの転職は、資格よりも以下の3つを明確化することが重要です。

・WILL(ありたい姿・キャリアビジョン)
・CAN(経験・スキル)
・MUST(貢献出来ること)

転職においては、今まで培ってきた「CAN(経験・スキル)」がベースとなります。
採用企業にとってのメリットを具体的かつ説得力を持って伝えるには、「MUST」の視点も大切です。そして、転職先が自分のキャリアビジョンややりたいこと(=「WILL」)の方向性に合致していると双方の納得感も高く、転職は成功しやすくなります。

“キャリアコーチ勝田健“

独占業務がある資格以外は、転職活動にはほとんど影響しません。40代から転職をする場合、やはり実務経験が重要になります。セカンドキャリアを考える上で、キャリアを変える必要がある場合はどうするか?経験を積む事を目的に、まずはプロボノ、ボランティアからチャレンジする事をお勧めします。

“キャリアコーチかず“

共通して言えるのは「40代の転職活動では資格の有無はさほど影響せず、今までのキャリアやスキルが重要視される」ということです。資格の取得を最優先にする必要はありません。

40代で転職を考えている方は、今自分にどのようなスキルや経験があるかを整理してみてください。そして「自分が入社したら貢献できること」を企業にアピールできるよう準備しましょう。

40代の転職、資格なしでも重視されるスキルや経験とは

40代の転職、資格なしでも重視されるスキルや経験とは

転職サイトdodaが発表(2022年2月)した転職成功者の平均年齢は「31.7歳」。転職する年齢に制限はありませんが、求人数が少ない年代であることは否めません。厳しい条件の中でも、重視されるスキルや経験とはどんなものなのでしょうか?

コミュニケーション力

コロナ禍でリモートワークやワーケーション、時差出勤など新しい働き方が増えました。​​そんな中、HR総研が発表した「社内コミュニケーションに関するアンケート2021」によるとコロナ禍における社内コミュニケーション状況は4割が悪化していると回答。

デスクを並べて仕事をすることが当たり前ではなくなった今、これまで以上にコミュニケーション力が求められます。

コロナ禍以降、さまざまな働き方をするメンバーとコミュニケーションするようになりました。そんな中でも、チームメンバーと円滑なコミュニケーションができる人、リモートでも部下を正しく評価できる人などが求められるでしょう。

マネジメント力

40代では、プレイヤーよりも管理職の求人が目立ちます。

一昔前まではひとつの会社で長く働いた人が管理職になる傾向にありましたが、最近では、転職して管理職へキャリアアップする人も少なくはありません。ミドル層を専門に扱う転職サイトも増えてきました。

2021年に厚生労働省が発表した労働力人口の推移をみると、 最新のもので6,860万人。2年連続で減少しており、日本全体の人口が減っていることを考えると、今後もこの傾向は続くと予想されています。

減少していく労働人口の中で、優秀な部下を育成し、企業力を強めるためにも40代の転職にはマネジメント力が求められていると言えるでしょう。

企画力

年功序列文化が崩壊しつつある昨今、転職回数が多いことを理由に不採用となることは減ってきました。

転職回数と合否の関係に関するアンケート」によると、「転職回数」のみを理由に、志望者を不合格にしたことはあるか? との問いに、22.8%が「ある」と回答。昭和の価値観が残ってはいるものの、転職回数と合否はほぼ関係なくなったとも言えます。

面接官経験者は次のように回答しています。

  • キャリアアップの転職ならば、向上心を評価
  • 転職回数と能力は関係ない。むしろさまざまな経験を積んでいる
  • 過去の転職と現在の力量とは別に評価すべき

これまでの経験や知識を活かした人材が求められていることがわかります。

変化の激しい今求められるのは、40代の知識と経験を活かした「企画力」です。企業の採用基準、評価基準も時代と共に変化してきました。客観的に自分の市場価値を把握することが大切です。

まとめ

最新の年代別有効求人倍率(関東労働市場圏)を見てみると、平均1.02で、40代はちょうど分かれ目の年齢です。

34歳以下 1.44
35〜44歳 1.10
45〜54歳 0.75
55歳以上 0.70
参照:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001062970.pdf

キャリアアップにつながる転職をしたいと考えている人にとって、ここで紹介した資格はあなたの武器になってくれることでしょう。また資格は取得して終わりではなく、次のステージへ行くためのツールに過ぎません。

これからの働き方を考えながら、自分の目的にあった資格を選び、新天地へ向けてチャレンジしてみましょう。