近年働き方の多様化により「副業」が注目されています。副業とは「本業とは別に勤務時間外に収入を得ること」です。会社員が副業を希望する理由として、以下のような点が挙げられます。

  • 収入を増やしたい
  • 1つの仕事だけでは生活できない
  • 自分が活躍できる場を広げたい
  • さまざまな分野の人とつながりたい
  • 現在の仕事で必要な能力を向上させたい

一方で、副業を検討しつつも「就業先にバレるのが怖い」「就業先が副業を禁止している」といった状況の人も少なくありません。

この記事では就業先に副業がバレない5つの方法を解説します。さらに副業がバレてしまう理由や副業をする上での注意点、副業がバレづらい仕事、副業がバレない金額まで網羅しています。これから副業をはじめたい方におすすめの記事です。

増加する副業の背景

なぜ今、副業が注目されているのでしょうか。ひとつの要因として、社会的に副業への興味や関心が高まっていることが挙げられます。ここでは副業従事者の現状と、企業側の取り組みをそれぞれ見てみましょう。

副業従事者は増加傾向

厚生労働省労働基準局提出資料によると、副業を希望する雇用者は年々増加傾向です。

出典:総務省「就業構造基本調査」

1992年の副業希望者数は約235万人に対し、2017年には約385万人と増加しました。約20年間で副業希望者数は100万人以上増えているのです。有業者(収入を得るのを目的として仕事をする人)に占める副業希望者の割合も1992年で4.5%でしたが、2017年では6.5%と増えました。

副業希望者の増加に伴い、副業就業者も年々増えています。下のグラフを見てみましょう。

1992年の副業従事者は約75万人でしたが、2017年には約128万人です。雇用者全体に占める割合は1992年は1.4%でしたが、2017年には2.2%と増加しています。

厚生労働省も副業を後押し

厚生労働省でも副業を後押ししており、2018年1月に副業や兼業について、現行の法令のもとで留意点をまとめたガイドラインを作成しました。

2022年7月には、副業を希望する従業員が多様なキャリア形成を図ることを促進するため、ガイドラインの改定もおこなわれています。

また2018年に働き方改革関連法案が整備され、副業に関する規定が設立された結果、ソフトバンクやリクルートなど日本の大手企業が副業を解禁しました。

企業側としては企業のブランディングにつながったり、社員の定着率を上げたりすることにもつながるので、今後も副業解禁する企業は増加すると予想されています。

副業がバレない5つの方法

副業がバレない5つの方法

先ほど、今後副業を解禁する企業は増加すると述べましたが、現時点ではまだ副業を解禁していない企業も少なくありません。副業が解禁されていない企業に勤めている場合は、会社にバレないよう副業をする必要もあるでしょう。

結論「副業がバレない」と断定できる方法はありませんが、バレにくい方法はいくつかあります。以下で紹介する5つの方法を参考に対策を練りましょう。

住民税の普通徴収への切り替え

副業がバレてしまうケースとして「住民税の金額の変化」が挙げられます。住民税の変化でバレないためには、確定申告書を提出する際に、住民税を自分で納付する「普通徴収」に切り替えなくてはなりません。

会社員の場合、住民税の一般的な納付方法は、給与から天引きされる「特別徴収」です。特別徴収を普通徴収に切り替えることで、給料分の住民税の納付書は就業先、副業分の住民税は自宅に納付書が届きます。

自分で納付するように切り替えることで、納付書からは副業がバレないようにできるのです。

現金手渡しの仕事を選ぶ

副業がバレるのを防ぐために、現金手渡しの仕事を選ぶこともひとつの手段です。現金手渡しの仕事が事業所得や雑所得の場合、きちんと手続きをすれば、副業が本業の会社にバレることはありません。

事業所得や雑所得であれば企業側は源泉徴収義務を負わず、現金手渡しなら銀行口座にも履歴が残りません。例えば、週末に1日だけ工事現場の作業を手伝う仕事は事業所得扱いにされる可能性が高いです。

給与扱いでは税務署への報告義務があるためバレてしまいますが、事業所得や雑所得は税務署と市役所に申告されないため、副業がバレづらくなります。

必ず確定申告する

副業による所得が20万円を超えている人は、原則確定申告の必要があります。確定申告によって副業がバレることもありますが、確定申告書の記入方法に注意すればバレることはありません。

通常、副業について確定申告をすると、会社で支払われる給与と合算されて翌年の住民税に反映されるため、会社に副業がバレる可能性があります。副業の収入を会社に知られたくない場合、確定申告書の「住民税に関する事項」の欄で「自分で交付」に印をつけましょう。

給料から住民税が引かれず、副業収入にかかる住民税は自分で納付することになります。

副業がバレたくない人は、必ず正しい方法で確定申告をしましょう。

給与所得のアルバイトやパートをしない

副業がアルバイトやパートの場合、バレる可能性は高くなります。会社が従業員に給料を支払うとき、1年間の給料の合計額を記載した給与支払報告書を、従業員の住む市区町村に提出するからです。

市区町村は、本業の会社と副業の会社からそれぞれ届いた2枚の給与支払報告書に記載された給与支払額を合算し、住民税の金額を計算します。副業分も合わせた住民税の納付書が本業の会社に届き、本業の会社の給料から天引きされます。

給料分よりも高い住民税を天引きされるため、本業の会社の経理担当や人事総務担当者に気づかれやすいのです。

SNSなどでの不用意な発信をしない

会社の人に副業について話してしまったり、SNSで不用意な発信をしたりすることで副業がバレるケースもあり得ます。特定されないように名前を変えたとしても、発信内容やアイコン、投稿画像によって特定される可能性があるのです。

同僚や先輩、後輩などにアカウントがバレてしまった結果、上司や人事に報告されることもあります。本業の会社にバレたくなければ、SNSでの副業に関する発信内容には気をつけ、社内の人にも話さない方がよいでしょう。

なぜ副業がバレるのか

そもそもなぜ副業はバレてしまうのでしょうか。いくつかの要因はありますが、ここでは代表的なものを紹介します。副業がバレる理由を知ることで、どのように対処すべきか対策を考えられるでしょう。

住民税の額の変動

住民税の額は、各企業が前年の給与支払報告書を当年1月末までに自治体に提出することで決まります。自治体より報告された住民税をもとに、企業は給与天引きをおこなうのです。

勤務先が複数ある場合、自治体は給与が最も多い会社に合算した給与額分の住民税を報告します。報告した際に住民税のずれが生じることから、本業の会社に副業がバレてしまうのです。

社会保険の変化

1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ職場で働いている正社員の4分の3以上であれば被保険者となります。

以下の全ての条件を満たすと、社会保険の加入義務があります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 賃金月額が月88,000万円以上
  • 雇用期間が1年以上見込まれる
  • 学生でない

社会保険は複数の職場で加入できません。社会保険加入義務要件を満たす複数勤務先がある場合「被保険者所属選択届・二以上事業所勤務届」を提出します。給与を合算した額で社会保険料が決まるため、提出のやりとりをする際にバレる可能性が高いのです。

年末調整の「給与所得者の基礎控除申告書」

年末調整では、毎月の給与から源泉徴収している税金の合計額と、再計算して確定した1年間の所得税の差額を精算します。副業で複数の企業から給与を受け取っていても、年末調整の手続きを行うのは1ヶ所です。

年末調整をする際に「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を提出します。その中の「給与所得者の基礎控除申告書」には、「給与所得」記載欄があり、これは副業分も含めて合算で記載する必要があるのです。

副業が給与所得でない場合でも、「給与所得以外の所得の合計額」欄に額を記載する仕組みとなっているため、金額を記載するときに本業の会社にバレてしまいます。

副業が会社にバレたらどうなるのか

副業が会社にバレたらどうなるのか

本来副業は自由ですが、企業によって副業規定は異なります。では、会社に副業がバレてしまうとどうなるのでしょうか。事例も含めて紹介します。

懲戒処分の対象になる可能性がある

本業の会社が「支障がある副業」「禁止の必要性が高い副業」と判断した場合、企業は労働者の自由を制限できます。本業の会社は違反した社員を懲戒処分にしたり、解雇したりできるのです。

本業の会社が処分を下せるのは、以下のような場合です。

  • 業務時間中の副業
  • 本業に支障をきたす副業
  • 社会的信用を低下させる副業

本業の業務時間中に、隠れて副業をしていたことがバレた場合、企業は処分を下せます。また、本業の仕事の終業後に深夜労働をして疲労を蓄積した結果、本業に専念できなくなってしまう場合も解雇されてしまう可能性があるのです。

他にも、本業の社会的信用を低下させると判断される副業をしていると、懲戒処分の可能性があります。

本業と競合する仕事は特に注意

本業の会社と競合他社にあたる会社での副業は特に注意が必要です。なぜなら、競合他社で副業をおこなうと、本業の会社から「売上減少に直結してしまう」と思われかねないからです。

競合他社で副業したことで、本業の売上・利益が減少したことが明らかになった場合、企業から従業員に損害賠償請求される可能性があります。

また、競合他社での副業は情報漏洩の観点から認めていない企業も多くあります。本業の会社の技術やノウハウ、顧客情報を活用できることから、情報漏洩のリスクが高いと判断されるからです。

職業選択の自由はある

企業によって副業を禁じたり、制限したりする場合がありますが、基本的に副業は原則自由におこなえます。むしろ禁止することは例外的場面に限られると考えられています。法律上でも副業禁止について明記されている箇所はありません。

日本国憲法では、職業選択の自由が保障されているため、副業として複数の仕事に就くことは問題はないとされています。一方で、公務員においては法律上一定の副業が禁じられています。

憲法において職業選択の自由が保障されている以上、企業による従業員の副業の禁止や制限は一概に認められていないのです。

副業している人は確定申告が必要

給与所得や事業収入のある人が本業以外の収入を得た場合、原則として確定申告する必要があります。ここでは確定申告に該当する条件や、開業届の提出方法、確定申告の方法について紹介していきます。

確定申告の有無については、以下の図をご確認ください。

所得が20万を超える場合は申告が必要

副業で確定申告するか否かの判断軸は「所得が20万円越えるかどうか」です。副業の確定申告は「副業がアルバイトやパートなのか」「アルバイトやパート以外なのか」によって内容が異なります。

アルバイトやパートで2か所以上から給与をもらう場合、年末調整されなかった勤め先の給与が20万円を超えていれば、確定申告が必要です。この場合は、支給金額が20万円を超えるかが基準になるため注意しましょう。

副業がクラウドソーシングや内職などの場合、副業の所得が20万円以下であれば確定申告の必要はありません。注意しなければならないのは、所得は「売上-経費」を指すことです。

例え売上が100万円あったとしても、経費に85万円かかっていれば所得は差し引き15万円になるので、確定申告をする必要はありません。

開業届の提出方法

開業届とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届書」と言います。事業の開始のほか、事務所・事業所の新設や増設、移転や事業廃止の際に、税務署へ提出する書類です。

開業届の提出が必要かどうかは、副業が「事業」に該当するかどうかで判断します。事業とは一時的なものではなく、反復継続して行うことです。以下のような副業は事業に該当します。

  • 会社勤めをしながらフリーライターとして継続的に仕事をしている
  • イラストを販売しており、毎月一定額以上の売上がある

本業・副業ともに開業届の提出方法に違いはありません。必要な欄を埋め、開業から1カ月以内に所轄の税務署長に提出します。開業届は管轄の税務署に持ち込む以外にも、郵送やe-Taxなどで提出が可能です。

確定申告の方法

所得が20万円を超える場合、確定申告をしなければなりません。確定申告には期限があり、1年間の所得を翌年の2月16日から3月15日までに申告書を提出し、かつ税金を支払う必要があります。期限内に支払わないと延滞税が発生するため注意しましょう。

副業の所得が給与所得か雑所得かで申告書の作成方法は異なるので、自分がどちらに当てはまるのか、確認しておきましょう。

給与所得として申告する場合の提出書類は以下です。

  • 確定申告書Aまたは確定申告書B
  • 源泉徴収票(本業分と副業分のすべてを添付)
  • マイナンバーカードまたは通知カード(コピー)
  • 身分証明書(運転免許証やパスポート、健康保険証のコピーなど)

雑所得として申告する場合は、まず雑所得の1年間の収入と必要経費をそれぞれ計算します。雑所得の収入金額および必要経費は、入出金の時期ではなく実現した時期で計上しましょう。

例えば、今年の12月に納品した仕事の報酬が翌年の1月に入ったときは、翌年の収入ではなく今年の収入として計算します。

雑所得の収入と必要経費を確定させたら「確定申告書A」の給与所得と雑所得を入力します。本業の給与は給与所得として、副業の利益は雑所得として、事前に確定させた収入金額と必要経費を入力すれば、申告書の作成です。

雑所得として申請する場合の提出書類は以下の通りです。

  • 確定申告書Aまたは確定申告書B
  • 源泉徴収票(本業分を添付)
  • マイナンバーカードまたは通知カード(コピー)
  • 身分証明書(運転免許証、パスポートまたは健康保険証のコピー、など)

副業の種類によって必要な書類が増える場合もあるので、わからない場合は国税庁に問い合わせたり、税理士に相談したりしましょう。

副業がバレない金額

副業がバレない金額のボーダーラインは、パートまたはアルバイトの場合「年間収入が20万円以下」であり、それ以外は「年間所得が20万円以下」です。

副業の所得の合計が年間20万円以下であれば確定申告は不要ですが、それはあくまでも「所得税」の話です。市区町村に支払う住民税は申告しなければなりません。

本来は納めなくてはならない住民税を納め忘れてしまうと、脱税行為にあたります。確定申告をしなくてよい場合でも、少しでも収入があれば、住民税の申告を忘れないようにしましょう。

副業がバレづらい仕事

副業がバレづらい仕事

仕事内容によっては、本業の会社にバレづらい副業もあります。給与所得ではなく、個人事業(事業所得)・雑所得であれば、バレづらい傾向です。ここでは、一例として3つ紹介します。

Webライター

バレづらい副業でおすすめなのが、Webライターです。Webライターの業務内容は大きく分けると以下の5つです。

  • インタビュー記事の作成
  • 求人広告の文章の作成
  • コピーライティング

Webライターが執筆するテーマは多岐にわたり、以下のようなジャンルがあります。

  • 美容コスメのECサイト内で使う商品説明文
  • 起業家へのインタビュー記事
  • アルバイトを募集するための求人広告文
  • 消費者にインパクトを与えるためのブランディングコピー

専門性が高いジャンルほど、記事の単価は高くなります。

スキル販売

本業以外の収入を得る方法として、自分の特技やスキルを売る方法があります。専用のサイトやアプリに登録し、特技やスキルの詳細を記載すれば販売できるので、気軽にはじめられるのが特徴です。

データ入力やデザイン、プログラミングなどのスキルだけでなく、恋愛相談や占いなど趣味で培ったスキルも販売できます。

一方で、同じスキルを持った人が多い分野で継続的な収入を得るためには、戦略も考えていかなければなりません。どうやって自分のことを知ってもらい、商品を買ってもらうかが重要です。

ブログ運営(アフィリエイト)

本業で得た知識や経験をブログに書いて発信したい人や、スキマ時間を活用して副業をしたい人はブログ運営がおすすめです。ブログを書いて読者が集まることで、アフィリエイトで収入を得られます。

アフィリエイトとは、企業の商品やサービスを紹介し、申込が入ったら報酬がもらえる仕組みのことです。ブログ運営を続けると、検索エンジンで上位表示できるよう意識するため、自然とSEOの知識が身につけられます。

継続的にブログを書き続けられる人はブログ運営をすることで、アフィリエイトの収益化が見込めるでしょう。

副業についてよくある質問

副業をする際によく聞かれる質問についてまとめました。

単発バイトの副業はバレませんか?

単発で派遣のアルバイトをしたときに、税金の支払い義務が生じた場合はバレる可能性があります。日給が交通費を除いて9,300円未満のときは、源泉徴収が不要のため、納税の義務はありません。

下記3つの条件が揃うと単発バイトでも納税の義務が生じるので、派遣会社から源泉徴収されます。

  • 日給が9,300円以上(交通費は除く)
  • 雇用主が事業者で「労働契約」を結んでいる
  • 継続勤務が「2ヶ月以上」の日雇い契約

身内や知り合いの店を手伝う場合は労働契約を結んでいないことが多いため、源泉徴収は必要ではありません。短期間でも高収入のアルバイトでは、源泉徴収されている場合があるので、給料明細をよくチェックしておきましょう。

Uber Eatsなどのデリバリーの配達員の副業はバレますか?

Uber Eatsをはじめとしたデリバリーの配達員の副業は会社にバレづらい傾向があります。なぜなら、個人事業主として報酬の支払を受けられるからです。

副業がバレる理由の多くは、副業の収入分の住民税が会社に請求されてしまうからです。個人事業主の場合には、会社の天引きではなく自宅に副業の住民税の納付書を送ってもらえます。住民税を普通徴収にできるため、Uber Eatsの副業は会社にバレづらいのです。

副業がバレない金額はありますか?

前提として、副業は住民税の額の変動や社会保険の変化によってバレる可能性があります。

給与所得の場合は副業先が市町村に給与支払い報告をするので、市は合算して住民税を計算します。

住民税を計算する中で本業の会社の住民税とのずれが発生するため、特別徴収から普通徴収にしておくのがよいでしょう。また、雑所得で所得20万円以下であれば確定申告が不要のためバレにくいでしょう。ただし、住民税の申告は必要です。

まとめ

会社員が副業をするとき、住民税や社会保険の変化が見られたり、SNSや社内で発信したりするとバレやすい傾向です。そのため、副業がバレないように活動するには、住民税や社会保険、確定申告などの仕組みを正しく理解する必要があります。

また副業に挑戦しようか悩んでいる人は副業がバレづらい仕事からはじめてみたり、副業が解禁している企業への転職を検討してみるのもよいでしょう。正しい知識を身につけて、副業をはじめましょう。