終身雇用制度が限界を迎え、40代・50代のミドル・シニア世代はセカンドキャリアを見据え、自分らしい新しい働き方を模索しています。

もちろんこれまでの経験や知見が活かせる転職を検討しつつも、会社にいながらもローリスクで始められる複業(副業)の選択肢を検討する方々も増えています。

しかし、複業を始めようにも「始め方がわからない」という人が多くを占めているのも事実です。「ミドルの転職」のユーザーアンケートによると

本業以外の仕事に興味がある人に複業をしていない理由を尋ねると、「始め方がわからないため」との回答が上位でした。

*1出典:「パラレルキャリア/副業」実態調査―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―

今回は大手企業の会社員としてキャリアを築きながら、「セカンドキャリアアドバイザー」として複業を成功させ、セカンドキャリア・ラボを主宰する加賀谷学氏に伺ったミドル・シニア世代が始めやすい複業の5つのステップをお届けします。

加賀谷学氏・・・43歳の時に心を病んだことをきっかけに将来のキャリアや生活に強烈な不安を覚え心理学、コーチング、スモールビジネスなどを学び始める。

学びや自己探求、多くの人との出会いの中で多くのミドルシニアが同じ悩みを抱えている事を感じる一方、会社員にとって自己啓発やビジネスを学ぶ障壁の高さに課題感を持ちもっと気軽に基礎知識を学びながらスモールステップを踏み出せる場として「セカンドキャリア・ラボ」(https://peraichi.com/landing_pages/view/secondcareer-lab)を開設。

現在は「セカンドキャリアアドバイザー」として本業をしながら複業として悩めるミドル世代のセカンドキャリア相談や自己探求をサポート。第2の人生を自分らしく歩むためサービスを提供する。

「自分が生きてきた世界はなんて狭いのか」という気づきと内観

セカンドキャリアや定年後のキャリアの悩みは誰もが直面する課題です。
だからこそ「そのハードル下げたい!」という想いで立ち上げたのがセカンドキャリア・ラボです。

セカンドキャリア・ラボはセカンドキャリアでチャレンジする仲間が集うコミュニティで、定期的に勉強会を開催するなど、セカンドキャリアに悩むミドルキャリア世代をサポートする取り組みを展開しています。

ーー 加賀谷さんがセカンドキャリア・ラボを主宰する事になったきっかけは何でしょうか?

加賀谷:

当初は「セカンドキャリア」という言葉を使っていなくて、自己分析や内観をする場所として集うことにしたんです。

私は今47歳ですが、40代前半の頃にキャリアについて悩む時期がありました。本業も忙しいですし、自分の大事にしている価値観を見直す時間や場所がなかなかなくて。

会社員の方で同じような方は多いと思います。

悩んだあげく、社外に出て学ぶ機会を作ったり、ビジネスについて勉強したりと一人で試行錯誤していました。しかし、個人でやるのは本当に大変でした。

例えば、ビジネススクールに通ってもその中でいきなりステップアップすることは難しいんです。すでに自分で独立を決めている方だったら100%の力を注げるかもしれないですが、会社員で複業しながらやっているとどうしてもスモールステップで進んでいく

ことになります。

複業を始められない方は最初の一歩の踏み出し方がわからないという方が多いですが、そこで躊躇してしまってはもったいないと思っているので、セカンドキャリア・ラボを立ち上げました。

私がこれまで得てきた知識や経験が他の方の参考になればという思いでみんなで一緒に前に進んでいくことを目的にしています。

私自身も40歳までは会社一辺倒でやってきて、外のコミュニティのことも知らない状態でした。そんな自分がいくつかのコミュニティに顔を出し、社外の人と触れ合うことで「このままではいけない」と学んだり、自分の目標に向かう仲間たちと出会いました。そこでセカンドキャリアを進めていくためには挫折しにくいコミュニティが必要だと思ったんです。

ーー ミドルキャリア世代は、それぞれの悩みがあると思いますが、加賀谷さんはどのような時にキャリアで悩んだのでしょうか?

加賀谷:

40歳で管理職に就きました。当時は今とは違って会社の中での出世がすべてと信じて疑いませんでした。昔流行った栄養ドリンクのリゲインのCMをご存知ですか?そのCMの「24時間戦えますか」というキャッチフレーズを地で行くような働きかたでした(笑)。

毎日終電で帰って家でも仕事をして4時間睡眠でまた出社して…というような身体がもたない働き方をしていました。部下を抱えながらプロマネもやっていて、プレッシャーや負荷に心が弱ってしまったんです。仕事を続けるのが難しくなり、管理職を降りるという決断をしました。これまでずっと上を目指して走っていたところに突然何もなくなってしまいました。

その時にどうして自分はそうなってしまったのか、自分のことを知ろうと心理学やコーチングを学び始めました。自己分析や内観を通して将来のキャリアと向き合うことになり、会社にいつつも他の稼ぎ方や起業独立の方法を模索しました。キャリアを見直す大きなきっかけとなった出来事です。

「出世し続けることは本質的に不可能」持続可能な働き方とは?

会社で定年まで勤め上げるのが難しい時代に、複業という手札は「自分の生き方」に合わせた新しい働き方の可能性を見出してくれるかもしれません。
セカンドキャリアの踏み出し方にはどんな課題があるのでしょうか。

ーー 今のミドル・シニア世代にどのようなキャリアの課題を感じますか?

加賀谷:

コンディション的に会社の中で出世し続けられる人はほんの一部だと思っています。役職定年など、誰にでも定年はやってくるので、会社の中で上へ上へと進むのには限界があります。それを大体の人は気づいていると思いますが、じゃあどうしたらいいの?ということがわかりません。

定年前にいきなり転職する方もいますが、それはほんの一部ですよね。独立起業なんて自分にはまだ無理と決めつけている方も多いと思います。

そもそも会社の中にいると社外に出るというのを躊躇する方が多いのが現状です。長く会社の中にいると会社の外のことがわからなくて困ります。どんな人がいるのか自分で通用するのか分からず怖いですよね。だから動けないんじゃないでしょうか。

キャリアをどうしようか悩むけれど「最初に何をしたらいいのか」が分からないので次のアクションで足踏みしている方が多い印象を受けます。

ーー 加賀谷さんは何をセカンドキャリアの第一歩目としておすすめしますか?

加賀谷

いきなり始めるのはハードルが高いので、外のコミュニティに参加してみることをおすすめします。オンラインで学べるセミナーや単発の勉強会などにちょっと参加してみるだけで見える世界は変わると思います。

いきなりコミュニティに属するとなるとまたハードルが上がるので、それよりも覗いてみるという感覚でいいと思います。会社の外の世界にどんな人がいるか探してみるというのが最初のステップですね。

もっと小さく分解するとしたら、その前の「検索する」という行為から始めてもいいかもしれません。自分に合いそうなテーマをネットで検索してみる。何を調べたらいいかわからない方はその時のお困りごとを調べてみてください。例えば「部下とのコミュニケーションで困っている」とか「副業を始めたい」などです。

お困りごとや今悩んでいることで探すと次の一歩に身が入りますよね。人間は本当に困っていないと動けないのでより現実的だと思います。

実践者が直伝「複業を始めるための5ステップ」

加賀谷さんが実感したキャリアの限界。その中で見つけた複業の始め方。
どんな方にも真似していただけるよう、5つのステップに分解していただきました。

ーー これから複業を始めようとしている方におすすめのステップを教えてください。

加賀谷:

STEP1 「本当の自分はなに?」を一個人として見つめ直す

会社員の自分は会社の中に埋まってしまっているので本当の自分を見つめ直すことをしないと方向を間違ってしまう。答えが出なくても、こっちの方向かなという目安を決められればOK。

STEP2 優先順位を見直す

今まで通りの時間の使い方では複業の活動に時間が割けないので、自分の時間やエネルギーの使いみちを確保していく。

STEP3 環境を変える

出会う人を変える、行く場所を変える、接する環境を変えてみる。

STEP1の自己分析した方向性を既に実現している人や環境に近づき、具体的なイメージを得る。

STEP4 とにかくやってみる

できるイメージが付いたところで自分自身がやってみる。やってみないと自分に合っているかどうかがわからないし、やっていくことで気づくことが出てくる。

STEP5 継続する

方向性や目標は変わってもいいので諦めないで継続すること。一旦止めても再開すること。ちょっとずつでも続けること。

ステップに入れなかったんですが意外と大事なのが「変なこだわりは捨てること」です。

会社の中での役職や立場、こだわりは社外で一個人になるとほぼ無意味。

一度「アンラーン」してなんでも新たに吸収する姿勢が複業を始める上では大切なポイントです。

長年会社で働いてきたミドル・シニア世代にとって、このマインドチェンジが大変で、時間がかかるので、このステップに早く取り組むことをお勧めします。

ーー 複業で成功されている方はどんな方でしょうか?

加賀谷:

「成功」ってなんでしょうか。

人によって答えは違うので、キャリアの場合に考えるべきことは「自分にとってなにが大事なのか」「将来どうなっていきたいのか」だと思います。

成功している方は誰に聞いても「自分はこうなりたい」「こういう世界にしたい」という自分のゴールを明確に持っていらっしゃいます。

私の知人で会社員をやりながらセミナー講師をしている方がいます。「人をつなぐ」ということを大事にしていて常にその軸からぶれないんですよね。でも、その方がいきなり複業でセミナー講師ができるようになったわけではなく、何年も前から地道に動いていたわけです。

一番初めは他の方の勉強会の司会からはじめたと聞いています。コツコツ積み重ねて自分がどうなりたいかを強く持っていて、諦めていない方が成功していると言えるのかなと思います

おわりに

加賀谷さんが実際に抱えていたキャリアの悩みにどう向き合い、何を第一歩目として複業を始められたのかお伺いしました。

ぜひ複業を始められる際のヒントになったら嬉しいです。

社会が次世代に負債を残さない、サステナブルな仕組みをつないでいく流れの中で、私たちの働き方も一時的に燃焼するものではなく、いかに持続可能な働き方を自分自身で見つけられるかが大事なんだと印象に残りました。