「好き」が複業になった! “食”への熱い想いを形にした60日間

今回インタビューしたのは、本業の先を見据えた新しいキャリアプランコンセプトが定まらず、一歩踏み出すことができなかった江戸有依子さん。ライフシフトラボの受講をきっかけに自身の複業の軸を明確にすることができ、実際に複業の活動をスタートさせ成功させることができました。今回はその成功の秘訣に迫ります。

いまのご職業について教えてください。

食品を取り扱う商社にて、海外事業部で主に欧米への日本食の輸出を担当しています。その中でも顧客の新規開拓が主な仕事になります。

どんな複業をされているのですか。

『ほまれ日和』という名前で自分一人の事業を立ち上げ、日本のお米を中心に、全国のその土地ならではの魅力を広めていく『米+one』という活動を始めています。具体的に、現在は「複業パティシエ」として米ぬかを使用したガトーショコラを販売したり、「食のイベントプロデューサー」として地域の食の魅力を伝えるためのイベントを開催しています。

複業をはじめようと思った理由を教えてください。

本業は入社してから15年ほど続けていますが、とても大好きな仕事です。ただ心のどこかで本業に真剣に取り組んだ先にある未来を考えることがありました。また、サラリーマンを卒業した時の自分の姿を想像して不安になることや、子どもと一緒に過ごす時間がもっとたくさんあればいいなという思いもあったんです。だからこそ、本業の延長線で自分の興味を活かすことができる複業に挑戦しようと決めました。

ライフシフトラボの受講前から複業の構想があったそうですね。

個人事業は2年前に登録を済ませており、いつか本格的に複業を始めたいと思っていました。本業では日本食を輸出する仕事で地方を回り、多くの仕入れ先さんとお会いする機会があります。そんな中で、食品を生産している農家さんやメーカーさんが大切にしている想いや、商品が出来上がるまでのストーリーを知るうちに、単に食品を輸出するだけではなく、その想いやストーリーも食品と一緒に広めていく活動がしたいと考え、スタートしました。また、子どもと一緒に食について考える「食育」の時間も大切にしたいと思ったのも、きっかけのひとつです。

そんな中、ライフシフトラボの受講を決めたきっかけは何だったのでしょうか?

名前を決めるまではよかったのですが、どうやって一歩を踏み出していいか分かりませんでした。そんな時に日経クロスウーマンに掲載されているライフシフトラボの記事にふと目が留まったんです。それがまさに、ライフシフトラボを受講された女性のインタビュー記事でした。その方も本業と複業のすみわけに挑戦されていて、「ライフシフトラボを受講したことで変わることができた」とお話しされていたのがとても印象的で、それが受講のきっかけとなりました。

プログラムを進めていく中でとくに印象的だった場面はありますか?

最初は、自分が挑戦してみたいことがたくさんあり「あれもやりたい!これも!」という状態だったのですが、それを言語化してビジネスの軸を決めることができたのが、とても印象的でした。

具体的にどうやって言語化していったのですか?

SNSのプロフィールにハッシュタグで自分を表すキーワードを綴られている方がいらっしゃいますよね。そんなイメージで、自分が挑戦したいことや大切にしている価値観などを、キーワードを出し合い、ライフシフトラボのトレーナーさんと一緒に言語化していきました。自分ひとりではなかなか言葉が出てこなかったり、まとめられなかったのですが、トレーナーさんが上手く考えや想いを引き出してくださいましたね。今でも、このキーワードのおかげで、私がどんなことをしている人間なのかをすぐに伝えることができるので、とても役に立っているなと感じます。

実際にどんなビジネスの軸が定まったのでしょうか?

『米+one』という活動です。日本の農業の真髄は、私たちの生活に欠かせないお米という考えをもとに、お米を中心に、お米に合うおかずや日本酒、米粉、米ぬかなど、47都道府県の地域の魅力をお米になぞらえて広めていきたいという想いから生まれました。

また、もともと就職活動をしていた頃から変わらない、自分なりの歩みたいキャリアを表す、3つのキーワードがありました。それは、日本人であること、女性であること、働き続けること、の3つです。

この軸が定まったことにより「あれもこれもやりたい!」と散らかっていた状態から、何かアイデアが生まれた時に、「これは『米+one』らしいな」と活動をする上での基準を定めることができました。

『米+one』!素敵ですね! その活動はまず何から始められたんですか?

活動の本質を深掘りすることに意識を向けるようにしました。商品を売る前に、自分自身がその商品のファンになるイメージです。魅力を探して腹落ちさせてから進みたいと思っています。この活動では自分の心がときめく商品を使いたいですし、その魅力を発信するために現地での情報収集は大切だと考えています。素材の魅力を知ることを自分の軸足とすることで、その商品を届けたい先のことも自然と考えることができます。どこか、本業の新規開拓をしていた時の営業活動と似ていますね! そのためか苦労を感じることはなく、むしろ学びを深めることができるこの時間がとても好きです。

複業のお話をもう少し教えてください。『米+one』の活動で今回はパティシエとして活躍されたと聞いたのですが。

はい、そうなんです!まさか自分がパティシエになるなんて思ってもいませんでした(笑)
きっかけは本当に偶然です。私が住んでいるまちの商店街に日本酒を買いに行った時に、レジの横に「あなたもパティシエになりませんか?」と書かれた、あるお店のチラシが目に止まりました。よくよく見てみると、日替わりでパティシエになることができ、自分の想いが詰まったスイーツをそのお店の場所を借りて届けることができるのだそう。何か感じるものがあり、「プロのパティシエではないのですが、米粉と米ぬかを使って地域の活性化に貢献したいんです」とすぐに連絡をしてご縁をいただきました。

そのお店も、ただスイーツを売って欲しいわけではなく、そのパティシエならではのコンセプトがあり、そんなパティシエ同士やお客様と繋がることで、街のコミュニティを活性化させたいという想いを持っていらっしゃいました。『米+one』の「地産地消」や「体に優しい」といったキーワードにも共感いただき、そのお店でスイーツを販売させていただくことになりました。

販売当日はどんな様子でしたか?

販売当日は、たくさんのお客様にご来店いただき、3時間ほどで80個ほど販売することができました。今回スイーツの企画から開発、店舗との交渉や販売まで全て初めての挑戦で、販売当日までは、どこか不安な気持ちがありました。そんな中たくさんのお客様にお求めいただき、嬉しいお言葉もかけていただいたりして、『米+one』の活動のスタートラインに立てたんだなと実感することができ、とても嬉しかったです。

複業の活動をされるなかで、ライフシフトラボの受講が役に立っているなと感じることはありますか。

トレーナーさんから受講中に頂いたアドバイスは、私にとって全て貴重で、今でも当時のメモをよく振り返っています。今はトレーナーさんは私のそばにはいませんが、羅針盤のように複業の道を進む上で、私を導いてくださっているように感じます。

現在はブログ投稿サイト「note」で自分の活動を発信することに力を入れて取り組んでいます。トレーナーさんから「活動の記録が自分の名刺代わりになるので、ひとつひとつ大切に記録して、それを発信することを心がけるように」とアドバイスを頂いていました。最初はSNSで発信しようとしてもアイデアがまとまりきらず、なかなか一歩を踏み出すのが難しかったのですが、トレーナーさんのアドバイスをもとに、自分の活動を知ってもらうためのひとつツールとして、またそれが実績に繋がるようにアウトプットをしています。

ただ活動状況を発信するのではなく、その先のターゲットを意識して内容や写真を選定するなど、アウトプットの目的や方法まで考えて取り組んでいます。このnoteを通じてひとりでも多くの方に活動の状況や想いを知っていただき、新たな繋がりが作れたらいいなと感じています。

実際に複業を始めてから、変化したことはありますか?

私自身の考え方や価値観が大きく変わりました。サラリーマン脳だけの世界とは違い年齢も性別も違う異業種の方と関わりながら、ようやくフリーランス脳のスイッチが入ったように感じています。まったく違う世界に住んでいる方と接点ができ、様々な考えや想いに触れられるのがすごく新鮮ですし、自分の中の固定概念や先入観に気づくことができた貴重な経験ですね。毎日驚きの連続です(笑)

それが本業にもいい影響を与えているなと感じています。管理職としてマネージメントする立場にありますが、言い換えれば、逆に良い意味で軸が無くなったことにより、異なるアイデアの中から方向性を見つけようと、視点が変わったことで肩の荷が降りました(笑) サラリーマンの肩書きに左右されない自由な発想を手に入れられたことは大きかったです。

今後のキャリアにおける目標を教えてください!

まずひとつは地域活性化に少しでも貢献したいと考えています。日本は少子高齢化が進み、都市部から離れた地方は衰退しつつあります。この活動を通じて、海外の方やその地方に住んでいない日本人に魅力を発信し、その地域の活性化を目指したいですね。

もうひとつは子どもの食育です。今はネットワーク社会で、様々な情報を簡単に手に入れることができます。それでも不自由はないと思いますが、やはり現地で自分の目で見て、手に触れて感じて、そんなリアルな経験値をたくさん持った子どもたちを育てていきたいと考えています。子どもも巻き込んだ、まさにワンランクアップのライフシフトを体現していきたいです。この活動は私にとっては子育ての一環でもありますね。

最後に、ライフシフトラボをどんな人に勧めたいですか?

やりたいことがあるのに、私のように一歩踏み出せなかった方にライフシフトラボを勧めたいです!例えば、「今は専業主婦だけど、実はこんなことに挑戦したかったんだよね」とか「今の本業が楽しくなくて、本当は漫画家になりたいんです」など。何かひとつ自分の心の中にやりたいことを持っているのなら、ライフシフトラボは間違いなくそれを叶えてもらえる場所のひとつです。

写真:工藤 理世菜