転職する人が増加し、急激なデジタル化で私たちの働き方が急激に変化する今、「キャリアプラン」の重要性が高まっています。時代に合わせて適切なプランをたて、キャリアを築くことで、自分の市場価値をさらに高めることができます。

また、企業担当者は自社の従業員がさらに高いモチベーションで仕事に向き合えるように、キャリアプランを明確にする研修や人事制度の導入を考えているケースもあるでしょう。

社会が必要とするスキルが変動する中、キャリアプランをしっかりと描き、キャリアプランに基づいて経験を積むことで、安定したキャリア形成が可能になります。

この記事では、初めてキャリアプランを考える人向けの情報から企業でキャリアプランを導入する場合に役立つ情報まで網羅的にをお伝えしていきます。キャリアプランを作成する際のポイントや具体例を解説しながら、どんなメリットが得られるのか詳しくお伝えします。

この記事の監修:勝田健氏
スタートアップ企業に特化した転職エージェントに従事。大手VCと連携し、累計約100名のCxOポジションに紹介実績あり。転職エージェント歴22年。スタートアップ業界の豊富な人脈(VC・起業家・CxO)と知見が強み。個人の「WILL」をベースとしたキャリア支援実績は累計2000名以上。スタートアップ企業の採用支援経験を活かし、自らも複業(結婚相談所・採用コンサルティング・新規事業起ち上げ支援)を実践。幅広い業界・サービスのビジネスモデルを熟知。

記事の目次

「キャリアプラン」とは何か

キャリアプランは「将来の理想像を明確にし、その実現を目指して構築した具体的な行動計画」を意味します。

転職活動中の面接で「5年後、10年後、どのような自分になりたいですか?」「入社後、やってみたいことを教えてください」と聞かれることもあるでしょう。これらの質問は、あなたのキャリアプランを聞かれていることと同義です。

将来の理想像を明確にすることで、闇雲に転職を繰り返さず、現在とのギャップを解消する的確な行動をとれます。さらに市場価値を高めていきたい人材にとって、キャリアプランは必須といえるでしょう。

キャリアプランの関連用語

ここからは「キャリアプラン」と合わせて覚えておきたい用語を紹介します。似ているようで意味が異なるものもあるので、しっかりと把握しておきましょう。

キャリアデザイン

キャリアデザインとは「仕事を通じて将来自分がなりたい姿、実現したい目標を定め、プライベートを含めて行動指針を設計すること」を意味します。

キャリアプランは「仕事での目標と計画」でしたが、キャリアデザインでは「仕事とプライベートを含めた自分自身の人生全体における目標」を計画していきます。

最近では、大学の中にキャリアデザインセンターが設置されていたり、キャリアデザイン学部・学科が設けられていたりと、学生のうちからキャリアデザインに触れる機会も増えているようです。

キャリアパス

キャリアパスの「パス」は、道を意味する英語の「Path」が使われています。つまり「従業員が目標に向かうための道筋」です。現在働いている会社でどのように昇進するか、どのようにキャリアアップするかという意味になります。

また企業ごとに独自のキャリアパスがあるため、どの企業も同じキャリアパスが準備されているわけではありません。以下のように企業ごとにキャリアアップに必要な道筋が示されているはずです。

  • うちの会社では、年齢や性別に関係なく結果を残した人が昇進できる
  • 現場仕事を○年以上経験しないと、管理職にはなれない
  • 部長以上の役職を目指すなら、40歳までに〇〇〇〇の資格が必要だ

この機会に社内の「キャリアパス制度」を見直してみるとよいでしょう。

キャリア自律

キャリア自律とは、自己実現に向け自らの意思で能力やスキルを伸ばすため、主体的で継続的にキャリアを形成していくことを意味します。企業に依存せず、自らの力でキャリアを築いていくとも言えるでしょう。

キャリア自律は、プランを描くだけでなく行動し実践していくことが大切です。具体的にどのように行動するかは、『キャリア自律とは|実現に向けた5ステップから企業事例、メリットまで網羅』にて紹介しています。こちらも参考にしてください。

キャリア形成

キャリア形成とは、キャリアプランに沿ってスキルや経験を積んでいくことを意味します。「キャリアプランなくしてキャリア形成はできない」とも言えますね。

「キャリア形成」という言葉は聞いたことがあっても、実行している人はごくわずかというのも特徴です。「キャリア形成を目的に、能動的にスキルを身につけたり学ぶ機会を作っているか?」という問いに対し、40代は「定期的に作っている」と回答した人がわずか11.6%にとどまっています。

聞いたことはあっても、実際に何をしたらいいのかわからないと悩んでいる方は、『「キャリア形成」とは何か | 必要とされる背景から具体的な6つのステップまで解説』もぜひご覧ください。

日本のおよそ7割の社員がキャリアプランを考えていない

公益社団法人日本生産性本部が発表した『第7回 働く人の意識調査』によると、日本人のおよそ7割がキャリアプランを「特に考えていない」という結果になりました。

引用元:公益社団法人日本生産性本部、『第7回 働く人の意識調査』調査結果レポート(PDF)

明確にキャリアプランを思い描いているのは、全体の5.5%と非常に低い結果です。この背景には、次のような理由が考えられます。

  • 数年先の経済状況が不透明なので計画を立てられない
  • コロナ禍で働き方や価値観が変わってしまった

しかし、不安定な時代だからこそキャリアプランが必要です。時代の流れに翻弄され、5年先「こんなはずじゃなかった」と後悔しても自分が辛いだけです。いまからでも遅くないので、しっかりとキャリアプランを考えていきましょう。

キャリアプランをもつ人の割合は女性よりも男性の方が多い

引用元:公益社団法人日本生産性本部、『第7回 働く人の意識調査』調査結果レポート(PDF)

調査結果レポートの内訳を見てみると、女性より男性の方が「明確にキャリアプランを思い描けている」人数が多いことがわかります。

女性の場合、出産・育児とも密接に関わってくるため、仕事だけのキャリアプランを描くことが難しい人も多くなっています。職場復帰したくてもできないといったネガティブな理由から、男女差が生まれてしまっている可能性も考えられるでしょう。

こういったジェンダー格差を少しでもなくしていくことが、日本の企業には求められているのかもしれません。

年代が上がるに連れてキャリアプランを持たない人の割合が増える

引用元:公益社団法人日本生産性本部、『第7回 働く人の意識調査』調査結果レポート(PDF)

年代別の内訳も見てみましょう。

傾向として、若年層の方が「キャリアプランを持っている」ことがわかります。この背景には、2008年のリーマンショックや、2011年の東日本大震災が影響しているかもしれません。将来への不安から自らのキャリアを考える習慣ができたと考えられます。

また新卒で入社した従業員を対象としたアンケートを見ると、企業選びの基準が変わってきたことも読み取れます。

引用元:マイナビキャリアリサーチLab、2022年卒大学生就職意識調査

20年以上「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」で企業を選んでいたものが、20年卒から「安定している会社」に逆転しています。これは、コロナ禍や経済状況の悪化から「給料がよくて、安定した企業」で働きたい学生が増えたと考えられるでしょう。

キャリアプランが必要な4つの理由

第7回 働く人の意識調査』では、キャリアプランが必要だとわかっていても、実際に行動できている人はごくわずかしかいないという結果が出ていました。特に40代より上の年代は、7割前後が「特に考えていない」と回答しています。

しかし、このままキャリアプランを立てないままでよいのでしょうか?

キャリアプランなしでは自分のやりたいこと、実現したいこともわからないまま社会人人生を終えてしまうかもしれません。キャリアプランが必要な理由を4つ紹介します。

副業(複業)や兼業を解禁する企業が増え、働き方が多様化したから

2018年の「働き方改革」によって、私たちの働き方は大きく変わりました。この年から「モデル就業規則」が改訂され、働き方改革の一環として「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の規定が削除されたのです。さらに、政府が副業(復業)や兼業を推奨する『副業・兼業のガイドライン』も同時期に策定されました。

2018年以降少しずつではありますが、副業・兼業を容認する企業が増えています。パーソルの調査によると、2018年は副業・兼業の「全面容認・条件付き容認」が合わせて51.2%だったのに対し、2021年には55.0%まで増加しています。

引用元:株式会社パーソル総合研究所、第二回 副業の実態・意識に関する定量調査

これまで「ひとつの会社で働き続ける」という価値観が主流でしたが、さまざまな働き方が認められるようになりました。それにより、自分はどうやってキャリアを築いていくのかを考えるきっかけが生まれたと言えるでしょう。

終身雇用の時代が終わりつつあるから

大企業に新卒で入社し、定年まで働き続ける「終身雇用」の考え方が変わってきています。先の見えない経済状況や多様な働き方によって、大企業に入っていれば安泰という時代ではなくなりました。

1社で働きたいと思っている人の数はどのように変動しているのでしょうか。2001年に行われたJILPT「勤労意識に関する調査」と、2021年に行われたマイナビ実施調査を比較してみましょう。「一つの企業でキャリアを築きたい」と考えている人の割合は40.5%から28.2%にまで下がっていました。

また「どちらともいえない・わからない」の数値が2倍近くに増えています。企業に安定・安泰を求めるのではなく、自らがキャリア形成することが求められる時代になったとも言えるでしょう。

デジタル技術の発達で人間の介在価値が変化しているから

デジタル技術の発達によって、業務効率化が進み、私たちの仕事での介在価値が変化しています。今までのようにただ業務をこなすだけでは、自分の業務が必要とされない時代がやってきてしまう可能性もあります。

多くのWebサービスの登場で、ホワイトカラーの多くの仕事がより効率化されています。また、掃除や警備など一部の業務ではロボットの活用が徐々に進み、ビルなどではロボットが活躍し始めるようになりました。

今後はインターネット上だけでなく、リアル世界でも業務効率化や業務代替が進んでいくと予想されます。

今後5年10年先の未来を見据えながら、自分の価値がどこにあるのかを明確にしておくことが必要です。そのためにも、キャリアプランとキャリア形成をしていくことが求められます。

転職時にキャリアプランが評価基準の一つになるから

転職先の企業が求めている条件と、自分が実現したいキャリアが一致しているかは重要です。

例えば、常に開発できる環境に身をおきたいと考えているエンジニアがいたとします。転職時に給与面だけを重視して、チームを取りまとめるマネジメント職で採用になると、想定していたキャリアプランとは異なる転職になります。

転職時にミスマッチが起こらないよう、キャリアプランを立てておくことがオススメです。給与や福利厚生だけでなく、自分のキャリアプランが実現できるかまで確認しておきましょう。

キャリアプランを考える個人のメリット

キャリアプランの内容について、これが正解というものはありません。また一度作ったものを都度書き直しても大丈夫です。ここからは個人でキャリアプランを考えるメリットをご紹介します。

仕事のモチベーションが上がる

キャリアプランがあると「仕事でやるべきこと」が明確になります。次のように仕事へのモチベーションが上がり、楽しく仕事ができるでしょう。

  • 自分に足りない部分がハッキリする
  • 目の前の仕事に集中できるので、悩みやストレスが少なくなる
  • 会社軸ではなく、自分軸で動けるようになるのでワークライフバランスが取りやすい

「1年後には、マネジメント職に異動したい」「3年以内には独立起業したい」「45歳までに資格を取りたい」など難しく考えず、まずはビジョンから考えてみるのもオススメです。

時代の変化についていける

キャリアプランは、自分自身の経験を振り返り目標を立てるだけでなく、今後の社会でどのような人材になりたいかを考えることにも繋がります。

いくらビジョンが明確でも、時代が求めていなければ実現は難しくなります。

新型コロナウイルスの流行や急激な円安、世界情勢の悪化による経済不安など、社会の変化にも柔軟に対応できるキャリアプランが大切です。「自分のキャリアプランは実現できるのだろうか?」「いまの会社にいることでキャリアプランは実現できるのか?」と時代の変化に合わせて考えられるでしょう。

キャリアプランを立てる5つのステップ

キャリアプランを立てる5つのステップ

ここからは、実際にどのようにしてキャリアプランを立てるのかを紹介します。キャリアプランとは「仕事における働き方の目標を立て、それを達成するための計画を作ること」ですが、作って終わりではありません。実現性の高いプランが立てられるステップを解説します。

自分のキャリアの棚卸しをする

いきなり、キャリアプランを考えるのではなく、準備として「自分のキャリアの棚卸し」をしましょう。自分自身の経歴を客観的に見れるため、気がつかなった強みや魅力を発見できます。

今までの経験を振り返りながら以下の事項について振り返ってみましょう。

  • 自分自身の強み、弱み
  • 周囲が評価していると感じるあなたの強み
  • 好きな仕事と嫌いな仕事
  • これまでの仕事で一番嬉しかったこと
  • これまでの仕事で一番大変だったこと、悔しかったこと
  • 仕事において「やりがい」を感じる瞬間
  • 20代、30代、40代と振り返り、一番成長したと思うこと

また、自分だけでは振り返ることが難しいと判断した際には、同僚や上司・部下など、職場でのあなたを知っている方に相談してみるのもオススメです。第三者の意見も取り入れて棚卸しできれば、自分のキャリアをより客観的に振り返られるでしょう。

ライフプランから逆算して考える

仕事をメインとしたキャリアプランと一緒に考えておきたいのが「ライフプラン」です。

ライフプランとは、これからどのような人生を歩みたいかを考える「人生設計」のこと。子育てや親の介護にかかる費用や家のローンなど、いつ、どこで、どれくらいのお金が必要になるのかを考えておくと、キャリアプランも考えやすくなります。以下にライフプランを考える際にヒントとなる事項をピックアップしてみました。時間がある時に考えてみましょう。

  • 何歳まで働きたいか
  • 定年後の収入はいくらか(年金、保険、退職金や働き続けた場合の給与など)
  • 家や車のローンなど支払いが終わる時期はいつか
  • 子どもが成人するまでにかかる費用はいくらか
  • 両親の介護が必要になった場合、かかる費用はいくらか

なかなかキャリアプランを具体的に落とし込めない場合、ライフプランから逆算して考えていくのがオススメです。キャリアプランとライフプランがうまく噛み合うことで、人生を計画的に進められるでしょう。「先がわからない」と不安になるだけでなく、先が見えないからこそ「見通しを立てておく」ことで安心が得られるでしょう。

中間地点(マイルストーン)での目標を設定する

キャリアの棚卸しができたら次は目標を設定します。ここで大切なのは、細かく目標を区切ることです。「10年後に起業する」「70歳になったら〇〇する」など遠い未来の目標を決めても、いまやるべきことがぼやけてしまいます。

まずは、自分がイメージできるところから目標設定していきましょう。いくつか目標設定の例をあげておきます。

  • 最終的に実現したい仕事における目標(〇〇さんのようになりたい/希望の役職/希望の職種/目指している働き方など)
  • 1年後の目標
  • 3年後の目標
  • 5年後の目標
  • 7年後の目標
  • 10年後の目標

またこれらは、一度決めたら変えられないものではありません。実行していく中で、軌道修正することも可能です。いまの自分が考えている目標を書いてみましょう。

現状のギャップを把握する

キャリアプランをつくり目標を明確にした後は、現状とのギャップを把握しましょう。

目指す目標を実現するには、自分にはどんな経験、知識、スキルが足りていないのかを明確にすることで、必要な行動を導き出せます。

現状とのギャップを把握することで、自分の次のアクションを明確にできます。転職するだけでなく、資格の勉強をしたり、複業をベースに経験を積むなど、さまざまな選択肢が出てくるでしょう。

転職・独立・副業(復業)など選択肢の幅を広げる

キャリアプランを作っていく中で、「キャリアアップ」の方法にもいくつか選択肢が出てきます。以下の例を参考にしながら、自身のキャリアプランに他の選択肢が考えられないか、検討してみましょう。

  • いまの会社で働きながらキャリアップする
  • 同業種に転職して、キャリアアップを狙う
  • 異業種に転職して、新しいキャリアを築く
  • 早期退職して、独立する
  • 副業(復業)をしながら、キャリアアップする
  • 働きながら、進学することでスキルを身につける

5つのステップを紹介してきましたが、キャリアプランに正解はありません。また、一度立てたら終わるものでもありません。定期的に見直しながら、キャリアプランを柔軟にバージョンアップさせていきましょう。

【職種別】キャリアプランの例

「キャリアプランに正解はない」と言っても、ゼロから作り出すのが難しい人も多くいます。ここからは、「営業」「エンジニア」「人事」のキャリアプランの例をご紹介します。

どのように作ればいいのか迷っている方は参考にしてみてください。

営業

営業職といっても、「商材」「顧客」「営業手法」は人それぞれ異なります。また40代では、現場を統括し人材を育成する立場として活躍する人も多いでしょう。今回は不動産業界で営業職をしているAさん(43歳)を例に、キャリアプランを考えてみました。

<例>

  • これまで、不動産業界で新規開拓をメインにさまざまな顧客と向き合ってきました。いまの会社で「新規開拓営業のプロ」として力を磨いていきたいです。
  • これまでの経験を活かし、違う業界へ転職したいと考えています。きっと転職は最後のチャンス。マネージャーとして部下を育て、売上に貢献できるようなチームを作り上げたいです。
  • 営業の仕事を通じてたくさんの顧客とお会いしました。これまでのスキルと経験を活かし、独立したいです。

3つのうちで「これが正解」というものはありません。自分がどのような領域で仕事をしたいのかキャリアプランを考えることが大切です。

エンジニア

エンジニアのキャリアもさまざまです。ここでは、通信系企業でインフラエンジニアをしているBさん(40歳)のキャリアプランをご紹介します。

<例>

  • 副業(復業)可能な職場なので、いまの仕事を続けつつ、開発案件の領域にもチャレンジしていきたいです。
  • システム運用は、人材育成がなかなか難しい現場でした。後輩たちが気持ちよく仕事ができるよう社員教育を導入したいと考えています。この会社で管理職を目指して働いていきたいです。
  • ハードな仕事なので、もっと自分のペースで働きたいと考えています。将来はインフラエンジニアとして独立できるように、まずは資格を取得したいです。

技術を極めたスペシャリストを目指すのか、管理職を目指すのか、人によって選択肢は異なります。どのようなキャリアプランにするか、広い視野で考えるのがオススメです。

人事

もしかすると、人事職で働いている人は、一番「キャリアプラン」を作っている人かもしれません。新卒から大手企業の人事として活躍してきたCさん(45歳)を例にキャリアプランを作ってみました。

<例>

  • 社労士資格を取得し、労務の専門家として独立したいです。独立後は、この会社の外部社労士として、従業員さんを支えたいと考えています。
  • 社内で新たに立ち上がる「研修・教育部門」の責任者になりたいです。研修制度やシニア層の活躍促進など、これまでの経験を活かして新たな分野にチャレンジしたいと思います。
  • ベンチャー企業からスカウトをいただいているので、人事部長として転職を決意しました。いままでの経験を活かして、新たな業界で頑張りたいです。

人事では「独立」が難しいと考える人も多いかもしれませんが、人事でのスキルをいかし社労士として活躍される方もいます。これまでのキャリアを棚卸ししていく中で、自分のやりがいや強みを活かしたキャリアプランを考えてみましょう。

企業が従業員のキャリアプランを考えるメリット

企業が従業員のキャリアプランを考えるメリット

ここまでは主に「個人のキャリアプラン」に視点をあてて解説してきました。ここからは、企業の人事担当者の視点にたって、キャリアプランについて解説していきます。

従業員がキャリアプランを作成することで生まれるメリットはなんでしょうか。社内でキャリアプランを取り入れていない場合は、参考にしてください。

優秀な人材を確保できる

キャリアプランは転職者だけでなく、現職で働いている従業員にも役立ちます。

すでにキャリアプランを評価シートに記入している、定期的にキャリアプランの見直しを実施している企業もあるかもしれません。その場合は、そのキャリアプランを参照することで、従業員がどのようなモチベーションで仕事に取り組んでいるかがわかります。

すでに明確なキャリアプランがある従業員と、明確ではない人とでは働くモチベーションも変わるでしょう。優秀な人材を確保するためにも、従業員のキャリアプランを考えておくことは重要と言えます。

社員のキャリアを考慮した人材配置ができる

キャリアプランは組織変更や人事異動などを考える際にも役立ちます。

「とりあえずキャリアプラン考えてさ!」と丸投げするのではなく、評価シートに記入欄を設けたり、キャリアパス制度を導入し従業員と共有するなど企業側の努力も不可欠です。

従業員のモチベーションが上がり、会社の業績もアップすると考えれば、企業の取り組みとしてキャリアプランを考えられる環境を作ることはポイントでしょう。

従業員のキャリアプラン作成を支援する人事施策とは?

従業員のモチベーション向上やスキルアップのために、会社主導でキャリアプランを作成する研修や人事制度の導入を検討している人も多いでしょう。

従業員に向けてキャリアプラン作成を促す方法をお伝えします。

研修の実施

まずはキャリアプランをつくる研修制度を導入しましょう。新卒や入社後一定の年数がたった従業員に対して実施できるように制度を整えることが重要です。

「HR総研 人事白書2016」によると、キャリア研修を実施している企業は35%しかありませんでした。

引用元:HR総研(ProFuture株式会社)、『HR総研 人事白書2016

従業員数が多い企業ほどキャリア研修が実施されていますが、300名以下の企業は21%以下と、キャリア研修の大切さが浸透していないことがわかります。キャリアプランの作成は、モチベーションアップにもつながります。少ない人数からでも、始めてみてはいかがでしょうか。

キャリアパスや人事制度による支援

キャリアプランの作成だけでなく、企業側がキャリアパスをしっかり提示することも大切です。例えば、社内の公募ポジションを柔軟に公開することで、優秀な人材を逃すことも減るかもしれません。

従業員に「転職しか選択肢がない」と思わせないよう、企業のキャリアパスを明示したり、人事制度によって多様な働き方を支援することも大切です。また、コロナ禍で「働く場所」についても大きく価値観が変わりました。従業員が求める働き方を提供することも、今後企業に求められていることのひとつかもしれません。

日常的なコミュニケーション

研修などで、一方的に「キャリアプランを作ろう」と従業員に丸投げしても、意味のあるキャリアプランにはなりません。

1on1を活用して部下との面談の際に話題に出したり、定期的にキャリアプランについて双方向のコミュニケーションをとれるように心がけましょう。

企業のキャリア支援の事例

ここからは、厚生労働省が行っている「グッドキャリア企業アワード」から抜粋して、キャリア支援に力を入れている企業をご紹介します。

株式会社JTB

「グッドキャリア企業アワード2020」で大賞を受賞した旅行会社大手の株式会社JTBは、2018年に経営統合しています。その際に「会社が社員を育てる」のではなく「会社は社員一人ひとりの自己発揮・自己実現を支援する(社員が自ら育つ、社はそれを支援する)」と掲げ、キャリア改革した結果が評価されました。

キャリア改革により「社員の成長スパイラル」が生まれ、社員のキャリア意識が向上したそうです。

SWSスマイル株式会社

「グッドキャリア企業アワード2020」で大賞を受賞したSWSスマイル株式会社は、リサイクル事業をメインとした三重県の企業です。77名(受賞当時)と少ない従業員数ですが、障がい者や高齢者のキャリア支援の推進をしたことで受賞しています。

勤怠業務の標準化や評価制度を明示したことで、チャレンジできる風土が醸成されたそうです。

株式会社はたらクリエイト

「グッドキャリア企業アワード2020」でイノベーション賞を受賞した株式会社はたらクリエイトは、育児や介護などライフステージで変化する女性の働き方をサポートしたことが評価されています。

4種類の雇用形態を準備し、個々の強みに合わせたジョブローテーションを組むことで、「誰もが仕事を楽しめる社会」を実現させられるよう取り組んでいるとのこと。

キャリアプランに困ったときに利用したいサービス

個人で「キャリアプラン」を作ってみたいと思った際に利用したいサービスを4つ紹介します。

ライフシフトラボ

運営会社株式会社ブルーブレイズ
対象(年代・性別)40代以上の男女
料金体系(コース名)入学金:50,000円
受講料:298,000円/60日間継続する場合:14,800円/月額※ 入会前の無料個別相談あり
特徴・復業などを入口にでキャリア自律を叶えられる
・復業禁止の企業で働いていても受講が可能

ライフシフトラボは、45歳以上のビジネスマンを対象にしたオンラインビジネススクールです。復業や社外での活動を足がかりに転職や起業、セカンドキャリアなど専任のキャリアコーチがマンツーマンで「キャリア自律」をサポートしてくれます。

キャリアアップコーチング

運営会社Learn&Grow LLC
対象(年代・性別)特になし
料金体系(コース名)自己分析支援プラン:330,000円/セッション5回
転職・キャリア支援プラン:495,000円/セッション10回
プレミアムキャリア支援プラン:660,000円/セッション15回※ 入会前の無料面談あり
特徴・利用期間の制限がないためマイペースに進められる
・自分のステータスに合わせたプランを3つの中から選べる

キャリアアップコーチングは、年齢関係なく受けることができるサービスです。自己分析や転職やキャリア支援などサポートしてほしいレベルに合わせたコースがあり、利用期間の制限もなくマイペースに進められます。

キャリア形成サポートセンター

運営会社キャリア形成サポートセンター 厚生労働省委託事業
対象(年代・性別)特になし
料金体系(コース名)無料(60分/対面 or オンライン)
特徴・「ジョブカード」を使ったキャリア形成ができる
・これからキャリアプランを作りたい、初心者向け

厚生労働省が運営する「キャリア形成サポートセンター」は、無料でキャリアプランを作ることができます。継続していくものではないので、お試しでキャリアプランを作ってみたい方にオススメのサービスです。

東京しごとセンター

運営会社公益財団法人 東京しごと財団
対象(年代・性別)都内での仕事を探している人(都民以外も利用可能)
料金体系(コース名)基本無料
特徴・オンラインセミナーなども実施されている
・総合相談から仕事の悩みに合わせた窓口へ案内してくれる

東京しごとセンターは、都内で仕事を探している人であれば、都民以外でも利用できる公的機関です。基本的には無料で利用することができるので、職探しと合わせてキャリアプランを考えたい人にもオススメです。

まとめ

「キャリアプラン」についてご紹介してきました。時代の変化にも柔軟に対応するためにもキャリアプランは大切です。キャリアプランには正解はなく、自分自身で計画し作り上げていくものです。誰かのためではなく自分のためのキャリアプランを作り、よりよいキャリア形成をしていきましょう。